研修担当者様へ

アサーション研修とは|自分も相手も大切にする伝え方を身につける

こんにちは、アイデア総研の大澤です。

「言いたいことがあるのに、なかなかうまく伝えられない」「NOと言えなくて、いつも抱え込んでしまう」「伝えようとすると感情的になってしまい、後悔する」——こんな悩みを持つ方は少なくないと思います。そのような方に知っていただきたいのが、アサーション研修で学ぶ「アサーティブなコミュニケーション」です。

アサーション(Assertion)とは、自分の気持ちや考えを正直に、しかし相手を傷つけずに表現するコミュニケーションスキルです。この記事では、アサーション研修とは何か、なぜ今の職場で必要なのか、そして具体的にどう学び、実践するかをご説明します。

アサーション研修のイメージ

アサーション研修とは何か

3つのコミュニケーションタイプ

アサーションを理解するためには、まず「3つのコミュニケーションタイプ」を知ることが役立ちます。私たちのコミュニケーションは、大きく次の3つに分類されます。

1つ目は攻撃的(アグレッシブ)なコミュニケーションです。自分の気持ちや意見を相手に強引に押しつけ、相手の気持ちを尊重しないスタイルです。「なんでそんなこともできないんだ」「私の言う通りにしろ」という態度が典型例です。短期的には相手を動かせることもありますが、関係性を傷つけ、心理的安全性を損ないます。

2つ目は非主張的(ノン・アサーティブ)なコミュニケーションです。自分の気持ちや意見を抑圧し、相手に合わせすぎるスタイルです。「どうせ私の意見なんて…」「相手が怒るのが怖くて言えない」という状態がこれに当たります。表面上の平和は保てますが、ストレスが蓄積し、やがて爆発したり、バーンアウトにつながったりします。

3つ目がアサーティブ(主張的)なコミュニケーションです。自分の気持ちや考えを正直に、かつ相手を尊重しながら表現するスタイルです。「私はこう感じました。あなたはどう思いますか?」という姿勢がこれに当たります。アサーション研修では、この3つ目のスタイルを日常のコミュニケーションで実践する力を育てます。

アサーション研修の目的と内容

アサーション研修とは、参加者がアサーティブなコミュニケーションスキルを理解し、実際の職場場面で活用できるよう訓練する研修プログラムです。単に「言い方を変えましょう」という表面的な技術指導ではなく、自己理解・他者理解・感情の扱い方・権利意識など、コミュニケーションの根幹にあるものを扱います。

研修の主な内容としては、

  • アサーションの概念とコミュニケーションタイプの自己診断
  • アサーティブな表現技法(DESCスクリプトなど)の習得
  • 役割演技(ロールプレイ)による実践練習
  • NOの伝え方・批判への対処・感謝の表現など場面別の練習
  • 感情のコントロールとセルフコンパッション

などが含まれます。知識の習得だけでなく、ロールプレイを通じた実践的な練習が、アサーション研修の核心です。

なぜ今アサーション研修が求められているのか

アサーション研修が近年特に注目を集めている背景には、いくつかの社会的・職場的変化があります。まず、多様な価値観・バックグラウンドを持つ人々が協働する職場が増えたことが挙げられます。性別・世代・国籍・価値観の異なるメンバーが一緒に働く中で、アサーティブなコミュニケーションの重要性が増しています。同じ言葉でも受け取り方が異なるため、「私はこう感じた」「私はこうしてほしい」という自己表現を丁寧に行うアサーションのアプローチが、ダイバーシティ推進においても重要なスキルとなっています。

次に、ハラスメント問題への意識の高まりがあります。パワハラ・セクハラ・モラハラなどのハラスメントは、多くの場合アグレッシブなコミュニケーションが根底にあります。アサーションを学ぶことで、無意識のうちに相手を傷つける言動に気づき、修正する機会になります。また、ハラスメントを受けた側がアサーティブに「その行動は私には辛いです」と伝えられる力をつけることも、ハラスメント防止教育の重要な一部です。

また、心理的安全性とエンゲージメント向上への関心の高まりも背景にあります。メンバーが安心して意見を言える職場づくりには、組織全体のコミュニケーションスタイルがアサーティブであることが欠かせません。アサーション研修は、個人スキルの向上だけでなく、組織文化の変革にも貢献します。

アサーションの核心:DESCスクリプト

DESCスクリプトとは

アサーション研修で最もよく使われる表現技法のひとつが「DESCスクリプト」です。DESCは、Describe(描写する)・Express(表現する)・Specify(提案する)・Consequences(結果を伝える)の頭文字をとったもので、アサーティブな伝え方を4つのステップで構造化したフレームワークです。

  • D(Describe:描写する):状況や事実を客観的に描写します。「昨日の会議で、私が発言しようとしたとき話を遮られました」
  • E(Express:表現する):その状況に対する自分の感情を「私は〜と感じた」という形で表現します。「私はとても残念に感じました」
  • S(Specify:提案する):具体的に望む変化や行動を提案します。「次回は最後まで話を聞いてもらえると嬉しいです」
  • C(Consequences:結果を伝える):その提案が実現したときのポジティブな結果を伝えます。「そうすることで、お互いの意見をより深く理解できると思います」

DESCスクリプトのポイントは、感情を攻撃的に爆発させるのでも、我慢して飲み込むのでもなく、冷静に自分の気持ちと望みを伝えることです。「あなたが悪い」という他者攻撃ではなく、「私はこう感じた、こうしてほしい」という自己表現が基本です。

DESCスクリプトの実践例

では、DESCスクリプトを実際の職場場面で使ってみましょう。

シーン:上司に無理な締め切りを設定されたとき

× ノン・アサーティブな反応:「…わかりました(できないのに)」と黙って引き受ける

× アグレッシブな反応:「そんな無理な期限はおかしいですよ!」と感情的に反論する

○ アサーティブな表現(DESC):

  • D:「現在、A・B・Cの3つのタスクを抱えており、今週中にすべて完了させるのは物理的に難しい状況です」
  • E:「この締め切りをそのまま守ろうとすると、品質を落とさざるを得ない点が気になっています」
  • S:「AとBを今週末までに、Cを来週月曜日までに完了するという優先順位はいかがでしょうか?」
  • C:「そうすることで、すべてのタスクを適切な品質で完成できると思います」

このような伝え方は、相手を攻撃せず、かつ自分の状況と気持ちを正直に伝えています。これが自分も相手も大切にする伝え方の核心です。

NOを伝えるアサーティブな方法

多くの方が最も難しく感じるのが、「NOを伝えること」です。断ることへの罪悪感・相手に嫌われることへの恐れ・関係が壊れることへの不安——これらがNOを言えない原因になります。

アサーション研修では、NOと言うことは自分の権利であり、同時に相手への誠実さでもあるという考え方を根底に置きます。無理にYESと言って期待に応えられないほうが、最終的に相手を傷つける可能性があるからです。

アサーティブなNOの伝え方のポイントは、①理由を簡潔に伝える、②代替案を提案する(可能なら)、③相手の気持ちに共感を示す、の3点です。「今回は難しいのですが、〇〇という方法ならお手伝いできます」という形が、NOを伝えながら関係性を保つ効果的な表現です。

アサーション研修で変わる職場のコミュニケーション

心理的安全性とアサーションの関係

近年、組織開発や人材育成の分野で最もよく聞かれるキーワードのひとつが「心理的安全性」です。Googleの研究で有名になったこの概念は、「チームの中で対人リスク(批判・拒絶・恥をかくこと)を恐れずに意見や懸念を言える状態」を指します。

心理的安全性が高い職場では、メンバーが積極的にアイデアを出し、問題を早期に共有し、ミスから学ぼうとします。そしてアサーティブなコミュニケーションは、この心理的安全性を作り出す土台のひとつです。リーダーがアサーティブに「私はこう思うが、みんなはどう思う?」と問いかけ、メンバーの意見を非評価的に受け取る文化が、心理的安全性を育てます。

アサーション研修を組織全体で受けることで、「言いたいことを言える職場」「お互いを尊重した対話ができる職場」が生まれ、結果として生産性・創造性・従業員満足度が向上します。

1on1ミーティングでのアサーション活用

アサーションを最も活かせる場のひとつが、上司と部下の1on1ミーティングです。従来型の面談では、上司が一方的に評価・指示を伝え、部下は「わかりました」と答えるだけ、という非アサーティブな構造になりがちでした。

アサーティブな1on1では、上司は「私はあなたのこの行動をこう見ています(D)。そしてこう感じています(E)。こういう方向で取り組んでみませんか(S)?」という形でフィードバックを伝え、部下も「私は今こういう状況で(D)、こう感じています(E)。こういうサポートがあれば助かります(S)」という形で自分の状況を伝えます。

双方向のアサーティブな対話が1on1の質を高め、信頼関係を深め、個人のパフォーマンス向上につながります。

チームでのアサーション実践:フィードバック文化の醸成

アサーション研修の効果を組織全体に広げるためには、フィードバック文化の醸成が重要です。アサーティブなフィードバックとは、「あなたの〇〇という行動が、チームの××に影響していると感じます。今後は△△という方法を試してみませんか?」という形の、具体的・行動的・前向きなフィードバックです。

「フィードバックは攻撃ではなく、相手への贈り物」——この意識が組織全体に広まるとき、職場のコミュニケーションは劇的に変わります。批判を恐れずに意見を言い合い、お互いの成長のために率直に伝え合えるチームは、困難な課題も乗り越えられる強さを持ちます。

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アサーション研修の実施方法と選び方

研修形式の選択肢

アサーション研修の実施形式には、さまざまな選択肢があります。半日〜1日の集中型研修、複数回に分けた連続型研修、オンラインでのライブ研修、eラーニングによる自学型など、目的・規模・予算に合わせて選択できます。

特にロールプレイを重視する場合は、対面でのグループ研修が効果的です。実際に「伝える・受け取る」という体験を繰り返すことで、知識が身体に染み込んでいきます。一方、全員が一堂に会しにくい組織には、オンラインや録画型の研修も有効です。

研修の対象者としては、「全社員向け」「管理職向け」「新入社員向け」「特定の部署向け」など、組織の課題に応じて設定します。特に管理職がアサーティブなコミュニケーションを実践することが、部下への波及効果が大きいため、まず管理職向けから実施することをおすすめするケースが多いです。

研修効果を高めるための事前・事後設計

アサーション研修の効果を最大化するには、研修本体だけでなく、事前準備と事後フォローのデザインが重要です。事前準備としては、参加者自身のコミュニケーションタイプの自己診断や、「最近難しかった場面」の振り返りを行い、研修への動機づけと課題意識を高めます。

研修後のフォローとしては、「先週アサーティブに伝えられた場面」を振り返る短時間の共有会や、学んだスキルを実際に使った経験を記録する「アサーション日記」などが有効です。研修で学んだことが日常で使われ続けることで、はじめて組織のコミュニケーション文化が変わっていきます。

アサーションと自己肯定感の関係

アサーションを学ぶ上で、自己肯定感は欠かせないテーマです。「自分の意見には価値がある」「自分の感情は正当である」「自分には断る権利がある」という自己肯定感が低いと、アサーティブに振る舞うことが難しくなります。

アサーション研修の優れた点は、テクニックを教えると同時に、「自分も相手も同等の価値ある存在だ」という根本的な人間観を培うことにあります。自分を大切にすることと、相手を大切にすることは矛盾しない——この考え方の転換が、アサーションの実践を支える最も深い土台です。

アサーションが活きる職場シーンと実践のヒント

会議での発言とアサーション

多くの方が「言いたいことを言えない」と感じるシーンのひとつが、会議の場です。「上司の意見に反論するのは怖い」「自分の意見は的外れかもしれない」「発言した後の空気が読めない」——こうした不安が、会議での発言を抑制します。

アサーティブな会議での発言には、「私は〜と思います。理由は〜です。いかがでしょうか?」という形が基本になります。自分の考えを「私の考えとして」提示し、かつ相手の意見も求める姿勢が、アサーティブなコミュニケーションの典型です。アサーティブなリーダーシップは、自分が主張するだけでなく、他者の声も引き出します。

リモートワーク・テキストコミュニケーションでのアサーション

リモートワークが普及した現代では、チャットやメールなどのテキストコミュニケーションでアサーションを実践する機会も増えています。テキストでは表情や声のトーンが伝わらないため、意図せず攻撃的または非主張的に見えてしまうリスクがあります。

テキストでのアサーティブなコミュニケーションのポイントは、①感情語を意識的に使う(「助かります」「嬉しいです」「困っています」)、②要望を具体的に書く(「できれば〇日までにご確認いただけると助かります」)、③解釈の余地を狭める(曖昧な表現を避け、事実と意見を分けて書く)、の3点です。テキストコミュニケーションでのアサーションは、リモートワーク時代の必須スキルとして、多くのアサーション研修で取り上げられるようになっています。

感情的になったときのアサーション実践法

アサーションの実践において、最も難しいのが「感情が高ぶったとき」です。怒りや悲しみが強いとき、私たちはアグレッシブになるか、逆に完全に引きこもって何も言えなくなるかの極端に振れやすくなります。

そのようなときの対策として有効なのが「タイムアウト」です。感情が高ぶったと感じたら、「少し時間をください」と言っていったん場を離れ、深呼吸や体を動かすことで感情を落ち着かせてから、改めてアサーティブに伝えるというアプローチです。感情そのものを否定しないことも重要です。「怒りを感じた自分がいけない」のではなく、「怒りを感じた。だからこそ、その気持ちをアサーティブに伝えよう」というのがアサーションの姿勢です。

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まとめ

いかがでしたか。アサーション研修とは、「自分の気持ちや考えを正直に、かつ相手を尊重しながら伝えるコミュニケーションスキル」を身につける研修です。攻撃的でも非主張的でもなく、アサーティブなコミュニケーションを実践することで、職場の関係性が深まり、心理的安全性が高まり、組織全体のパフォーマンスが向上します。

DESCスクリプトを使ったアサーティブな伝え方、NOの伝え方、フィードバック文化の醸成——これらは、今日からすぐに始められる実践です。「伝えることが苦手」と感じている方も、「伝えることで摩擦が生まれる」と感じている方も、ぜひアサーション研修でそのコミュニケーションを変えてみてください。

アサーションは一度学べば終わりではなく、日々の実践の中で磨かれていくスキルです。今日の会議で一つだけアサーティブな発言をしてみる、今週の1on1でDESCを使って気持ちを伝えてみる——そんな小さな一歩の積み重ねが、やがて職場全体のコミュニケーション文化を変えていきます。「自分も相手も大切にする職場」を、ぜひあなたの手で作っていきましょう。

研修担当者の皆さんへ:アサーション研修を企画する際には、知識インプットだけでなく、実際の場面を想定したロールプレイを十分に取り入れること、そして研修後のフォローアップの仕組みを事前に設計しておくことが、研修効果の最大化につながります。参加者が「研修で習ったことを実際に使えた」という体験を重ねることで、学びが定着し、組織のコミュニケーション文化が本当に変わっていきます。

アイデア総研について

アイデア総研の研修風景
実際の研修・ワークショップの様子

アイデア総研は、ベイブレード(世界累計5億個)・人生銀行・夢見工房の開発者である大澤が主宰するアイデア発想・研修機関です。アサーションをはじめとするコミュニケーションスキル研修から、創造性開発・アイデア発想ワークショップまで、これまでに5,000人以上の方々にご提供してきました。大阪公立大学・千葉大学・筑波大学・法政大学などでの講義実績もあり、著書『おもちゃ流企画術』(実業之日本社)も好評です。対面・オンライン・ハイブリッドのいずれにも対応しており、全国どこへでも伺います。1時間から6時間まで柔軟に対応可能ですので、まずはお気軽にご相談ください。