アイデア発想の記事

コンバージェントとダイバージェント思考|アイデアを広げて絞る発想法

こんにちは、アイデア総研の大澤です。

「アイデアを出し合う会議なのに、結局いつも同じ人の意見が採用される」「ブレインストーミングをやっても、なんか深まらない感じがする」——こんな経験、ありませんか?実は、アイデア発想には大きく2つのモードがあり、この2つを正しく使い分けることが、発想の質と量を劇的に変えます。

それが「ダイバージェント思考(発散思考)」と「コンバージェント思考(収束思考)」です。今回は、ダイバージェント思考・コンバージェント思考とはどういうものか、そして2つを効果的に組み合わせて使う方法についてお伝えします。

ダイバージェント思考のイメージ

ダイバージェント思考・コンバージェント思考とは何か

ダイバージェント思考(発散思考)の定義

ダイバージェント思考(Divergent Thinking)とは、ひとつの問いや課題に対して、できるだけ多くの異なるアイデアや解決策を広げていく思考プロセスです。「発散」という言葉が示す通り、様々な方向に思考を広げ、可能性の幅を最大化することを目的としています。

アメリカの心理学者J.P.ギルフォードが1950年代に提唱した概念で、「創造的思考」の核心として位置づけられています。ダイバージェント思考では、「正解を1つ見つける」ことよりも「できるだけ多くの選択肢を生み出す」ことが重要です。

ダイバージェント思考の特徴は、判断を保留して自由に発想を広げることにあります。「これは現実的に無理」「コストがかかりすぎる」といった評価・批判を一時的に脇に置き、とにかくアイデアを量産する。このフェーズでは、突飛なアイデア・非常識な発想こそが歓迎されます。

コンバージェント思考(収束思考)の定義

コンバージェント思考(Convergent Thinking)は、ダイバージェント思考とは対照的に、多数のアイデアや情報を評価・分析し、最も適切な解決策や答えに絞り込んでいく思考プロセスです。「収束」という言葉の通り、広がった発想を一点に集約することを目的としています。

コンバージェント思考では、論理性・実現可能性・コスト・リスクといった基準で選択肢を評価し、最適解を選ぶ能力が求められます。正解を導き出す力とも言え、問題解決の場面では非常に重要な役割を果たします。

学校のテストや資格試験で鍛えられる思考力の多くは、コンバージェント思考です。「この問題の正解はこれ」という1点集中型の思考は、日常的なビジネス業務でも頻繁に使われています。

2つの思考モードの違いと役割

ダイバージェント思考とコンバージェント思考は、対立するものではなく、創造的問題解決の異なるフェーズを担うパートナーです。

まずダイバージェント思考で可能性を広げ(発散)、次にコンバージェント思考で最適解に絞り込む(収束)。このふたつを意識的に組み合わせることで、発想の質と実行の精度が両立します。

問題が起きるのは、この2つが混在してしまうときです。「アイデアを出しながら同時に評価する」という状態では、発散も収束も中途半端になります。それぞれのフェーズをしっかり分けることが、効果的な発想法の鉄則です。

なぜ発散と収束を分けることが重要なのか

同時に行うとどちらも機能しない

アイデア出しの会議で「それは現実的じゃない」「予算的に無理」という声が飛び交うと、参加者は萎縮し、斬新なアイデアが出なくなります。これは発散のフェーズで収束(評価・批判)が入り込んでしまった典型例です。

逆に、十分に発散しないまま絞り込みを始めると、「最初から思いついていたアイデア」の中からしか選べなくなります。「どうせこの3択の中から選ぶんでしょ」という状態では、真のイノベーションは生まれません。

発散と収束を明確に分けて行うことで、それぞれの思考が最大限に機能するのです。「今は発散の時間」「今は収束の時間」と明示するだけで、会議やワークショップの質は大きく変わります。

ダイバージェント思考が生む「量」の価値

ダイバージェント思考では「量」が質を生みます。最初から「いいアイデア」を出そうとするのではなく、まず50個・100個と数を出すことが重要です。

量を出す過程で、最初の30個は「ありきたりなアイデア」が多く出ます。しかし40個・50個と積み重ねていくと、脳が慣れたパターンを使い果たし、新しいパターンを探し始めます。この領域にこそ、真に新しいアイデアが眠っているのです。

「まずは100個出す」という目標を設定するだけで、思考の領域が広がります。最終的に使うのは数個でも、量を出すプロセスが質の高いアイデアへの道を開くのです。

コンバージェント思考が生む「質」の価値

ダイバージェント思考で広げたアイデアを、コンバージェント思考で絞り込む際には「評価の基準」が重要です。どんな基準で選ぶかによって、最終的なアイデアの方向性が変わります。

よく使われる評価基準は「実現可能性」「インパクト」「独自性」「コスト」「タイムライン」などです。これらを点数化したマトリクスを使ったり、「この中でユーザーが最も驚くのは?」という視点で絞ったりと、意識的な評価軸を持つことがコンバージェント思考の質を高めます

おもちゃ開発に学ぶダイバージェントとコンバージェントの実践

ベイブレード開発での発散と収束

私がおもちゃ開発の現場で経験してきた作業は、まさにダイバージェント思考とコンバージェント思考の繰り返しでした。ベイブレードの開発がその典型です。

「バトルトップが売れない」という問題に直面したとき、まずダイバージェント思考で「なぜ売れないのか」について可能な限り多くの仮説を立てました。デザインの問題、価格の問題、遊び方の問題、競合との比較、子どもの心理……と様々な角度から発散的に考えました。

その後、コンバージェント思考で仮説を絞り込み、「1種類しかないから2個目を買う理由がない」という核心的な問題を特定しました。そこからまたダイバージェント思考で「どうすれば2個目を買う理由が生まれるか」を発散させ、「バトルできる」「改造できる」という2つの要素を導き出しました。

発散と収束の繰り返しがイノベーションを生む

ベイブレードの開発プロセスで重要なのは、発散と収束を何度も繰り返したことです。「すげゴマ」→「バトルトップ」→「ベイブレード」という3段階の失敗と改善は、それぞれ「発散して仮説を立て、収束して試す」というサイクルの繰り返しでした。

一発で正解を出したのではなく、発散→収束→実験→評価→再発散というプロセスを地道に繰り返すことで、最終的に爆発的なヒット商品が生まれた。このプロセスはどんな業界のイノベーションにも共通する普遍的な構造です。

人生銀行にみる「収束から発散へ」の逆算発想

人生銀行の開発では、少し変わったアプローチを使いました。まず「理想的なゴール(貯金を楽しくする)」をコンバージェント思考で定義し、そこからダイバージェント思考で「楽しくするための方法」を発散させるという、逆算型の発想法です。

ゴールを先に収束させてから発散することで、アイデアの方向性がブレにくくなります。「何のためのアイデアか」が明確なため、発散の中から価値あるアイデアを選びやすくなりました。この「先に収束・後に発散」という順番も、状況によっては効果的なアプローチです。

ダイバージェント思考のイメージ

ダイバージェント思考を鍛えるための具体的な方法

ブレインストーミングのルールを徹底する

ダイバージェント思考の代表的な手法がブレインストーミングです。効果を最大化するためには、4つのルールを徹底することが重要です。

①「批判厳禁」——どんなアイデアも否定しない。②「自由奔放」——突飛な発想ほど歓迎する。③「質より量」——とにかく数を出す。④「便乗OK」——他人のアイデアを組み合わせたり発展させたりしてよい。

このルールが守られると、参加者は安心して斬新なアイデアを出せるようになります。特に「批判厳禁」は最重要ルールです。一度「それは無理」という声が出ると、その後のアイデア出しが萎縮してしまいます。

異なる視点からの強制的な発想転換

ダイバージェント思考を深めるには「強制連想法」も効果的です。「もし子どもがユーザーなら?」「もしコストが10分の1になったら?」「もし逆にするなら?」といった制約や転換の問いを使って、思考を新しい方向に強制的に向けます。

この方法を使うと、普段の思考パターンから外れた発想が生まれやすくなります。自分の思考の癖を意識的に崩すことで、ダイバージェント思考の幅が広がります。

時間制限を設けて量を優先する

ダイバージェント思考には「時間制限」も有効です。「5分で20個のアイデアを出す」という制約を設けることで、考えすぎずに直感的にアイデアを出す練習になります。

時間内に完成度を求めると質が落ちますが、発散フェーズでは完成度は必要ありません。まず出す、後で磨く。この割り切りがダイバージェント思考を機能させる鍵です。

コンバージェント思考を高める評価・絞り込みの技法

評価基準を事前に明確にする

コンバージェント思考で大切なのは、絞り込みの基準を事前に決めておくことです。「なんとなく良さそう」ではなく、「実現可能性・インパクト・独自性」といった評価軸を設定してから絞り込む。そうすることで、個人の好みや声の大きさによるバイアスを排除できます。

評価基準はチームで合意しておくことが重要です。同じアイデアでも、「コスト重視」で見るか「インパクト重視」で見るかによって評価が変わります。何を優先するかをあらかじめ決めておくことで、コンバージェント思考の精度が上がります。

ドット投票や多数決を活用する

多くのアイデアを素早く絞り込む方法として「ドット投票(ステッカー投票)」があります。参加者それぞれが一定数のシール(ドット)を持ち、良いと思うアイデアに貼っていく方法です。

この方法では全員が同時に評価するため、発言力の差が出にくく、多様な視点でアイデアを評価できるというメリットがあります。結果が一目でわかるため、スピーディーな絞り込みが可能です。

「なぜこれを選ぶのか」を言語化する

コンバージェント思考の最後のステップは「選んだ理由を言語化する」ことです。直感で選んでも、「なぜ良いと思ったのか」を言葉にすることで、アイデアの本質的な強みが明確になります。

この言語化プロセスは、次のダイバージェント思考への引き継ぎにもなります。「このアイデアの核心はここにある」という理解から、「ではそれをさらに深めるとどうなるか」という発散につなげることができます。

ダイバージェント思考のイメージ

ダイバージェント・コンバージェント思考をチームで実践するコツ

ファシリテーターが発散と収束を明確に仕切る

チームで発散と収束を行うには、ファシリテーターが2つのモードを明確に宣言・管理することが重要です。「今から15分間は発散タイムです。どんなアイデアも歓迎し、評価は一切しません」という宣言があると、参加者は安心して自由に発想できます。

逆に、「では今から収束タイムに入ります。先ほど出たアイデアを評価・絞り込みます」という切り替えの宣言も重要です。モードが変わったことを参加者全員が理解することで、思考のギアチェンジがスムーズに行われます。

発散フェーズでは「いいね!」「面白い!」という声がけを積極的に行い、収束フェーズでは「なぜこれが良いのか」を丁寧に言語化する習慣をつけることで、チーム全体のアイデア発想力が底上げされます。

ダイバージェントとコンバージェントを交互に繰り返す

一回の発散と収束で終わらず、複数回繰り返す「ダブルダイヤモンド」のプロセスが、特に複雑な課題の解決には有効です。英国デザインカウンシルが提唱したこのフレームワークは、「問題の発散→問題の収束→解決策の発散→解決策の収束」という4フェーズで構成されています。

最初の発散・収束で「本当に解くべき問題」を明確にし、次の発散・収束で「最適な解決策」を見つける。この2段階構造により、問題の定義自体を深めながらアイデアを発展させることができます。

「問題を間違えていた」という事態を防ぎながら、革新的な解決策にたどり着けるのがダブルダイヤモンドの強みです。ダイバージェント思考とコンバージェント思考の交互の繰り返しが、発想の深みと精度を同時に高めます。

心理的安全性がダイバージェント思考の鍵

ダイバージェント思考を組織の中で機能させるには、心理的安全性(Psychological Safety)が不可欠です。「変なことを言ったら笑われる」「常識外れな発想は評価されない」という不安がある組織では、本当の意味での発散が起きません。

心理的安全性を高めるには、リーダー自身が率先して「変なアイデア」を出すことが効果的です。上司が「こんな突飛なことを言っても大丈夫だ」という前例を作ることで、チームメンバーも安心して自由に発想できるようになります。

ワークショップでは、「このアイデアは採用されなくても問題ない」「失敗しても責められない」という環境を作ることが、ダイバージェント思考を最大限に引き出すための基盤になります。

日常業務でダイバージェント・コンバージェント思考を活かす場面

企画・商品開発での活用

新商品の企画や新サービスのアイデア出しは、ダイバージェント思考が最も威力を発揮するシーンです。まず「ターゲットの悩みは何か」「理想の未来はどんな状態か」という問いをたてて、思いつく限りのアイデアを発散させます。

その後、コンバージェント思考で「市場規模・競合優位性・実現可能性・コスト」の観点から絞り込む。さらにもう一度発散させて細部のアイデアを肉付けし、最終的に収束させてプロトタイプを決める——この流れが、質の高い企画を生み出す黄金パターンです。

重要なのは、絞り込む際に「なぜこのアイデアか」を言葉にすること。言語化することで、アイデアの核心が明確になり、次の発散フェーズへの良いインプットになります。

問題解決・改善活動での活用

業務改善や問題解決の場面でも、発散と収束の使い分けは非常に効果的です。「なぜこの問題が起きているのか」という原因分析をダイバージェント思考で行い、できるだけ多くの仮説を立てます。その後コンバージェント思考で最も影響が大きい原因を特定し、対策を発散させ、最適な対策を収束させる。

特に問題解決では、「原因の発散→原因の収束→対策の発散→対策の収束」という段階を踏むことで、本質的な問題に対して効果的な解決策を導き出せるようになります。見かけ上の症状だけでなく根本原因にアプローチできるのが、このプロセスの強みです。

研修・ワークショップでの実践練習

ダイバージェント思考とコンバージェント思考は、知識として理解するだけでなく、繰り返し体験することで初めて身につくスキルです。研修やワークショップでの実践的なトレーニングが、日常業務への定着を大きく加速させます。

アイデア総研のワークショップでは、参加者が実際のビジネス課題をテーマに、発散・収束のサイクルを体験します。「あ、さっきの自分の発言はコンバージェントが入り込んでいた」「このフェーズはもっと発散を続けるべきだった」という気づきが、参加者の思考習慣を着実に変えていきます。

まとめ

いかがでしたか。今回は「ダイバージェント思考とコンバージェント思考」について、基本的な意味から実践的な活用方法までお伝えしました。

ダイバージェント思考(発散思考)はアイデアを広げ、コンバージェント思考(収束思考)は最適解に絞り込む。この2つは対立するものではなく、創造的問題解決の両輪です。発散と収束を意識的に分けて行い、繰り返すことで、アイデアの質と量が格段に向上します。

ベイブレードや人生銀行の開発でも、発散と収束を何度も繰り返すことで、一発では出てこない核心的なアイデアが生まれました。大切なのは「今は発散の時間」「今は収束の時間」と意識的に切り替えること。この習慣が、あなたとあなたのチームのアイデア発想力を確実に底上げしてくれます。

今日の会議からさっそく「まず5分間は評価禁止でアイデアを出す」という発散タイムを設けてみてください。小さな変化が、大きなイノベーションへの第一歩になります。

アイデア総研について

アイデア総研の研修風景
実際の研修・ワークショップの様子

アイデア総研では、ダイバージェント思考とコンバージェント思考を組み合わせた実践的なアイデア発想ワークショップを提供しています。代表の大澤は、世界累計5億個を超えるベイブレード・人生銀行・夢見工房の開発者であり、5,000人以上への講義実績を持ちます。大阪公立大学・千葉大学・筑波大学・法政大学でも登壇実績があり、著書『おもちゃ流企画術』(実業之日本社)も好評発売中です。対面・オンライン・ハイブリッドに対応し、全国どこでも1時間から6時間まで柔軟にご対応いたします。チームのアイデア発想力を高めたい方はぜひご相談ください。

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