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カスタマージャーニーとは|顧客体験を可視化してアイデアを生む方法

こんにちは、アイデア総研の大澤です。

カスタマージャーニーとはどういうものか」「どう活用すればビジネスに役立つのか」――そんな疑問を持ってこのページにたどり着いた方は、マーケティングや商品開発、サービス改善に本気で向き合っている方だと思います。顧客体験を”旅”に見立てて可視化するカスタマージャーニーは、新しいアイデアを生み出す強力なフレームワークです。

この記事では、カスタマージャーニーの基本概念から、実際のマップ作成ステップ、アイデア発想への具体的な活用法まで、わかりやすくお伝えします。おもちゃ開発の失敗談も交えながら顧客視点の本質に迫りますので、ぜひ最後までお読みください。

カスタマージャーニーのイメージ

カスタマージャーニーとは何か――顧客体験を”旅”として捉えるフレームワーク

カスタマージャーニーの定義と基本的な考え方

カスタマージャーニーとは、顧客が商品やサービスを認知してから、検討・購入・利用・継続(またはリピート購入)に至るまでの一連の体験プロセスを、まるで旅(ジャーニー)をするように可視化した概念です。単純な購買フローとは異なり、顧客の行動だけでなく、その行動の裏にある感情・思考・疑問・期待まで丁寧に捉えることが特徴です。

カスタマージャーニーとは、企業ではなく顧客の視点から体験全体を俯瞰するための”地図”だと理解すると、このフレームワークの本質がつかみやすくなります。多くの企業は「自社の商品はこう使われているはずだ」と思い込んでいます。しかし実際には、顧客はまったく違うルートで商品を知り、まったく違う場面で迷い、まったく違う感情を持って購入しています。そのギャップを発見するために、カスタマージャーニーは非常に有効なツールです。

日本語では「顧客体験旅行」とも言い換えられますが、実務では「カスタマージャーニー」という英語表記のまま使われるのが一般的です。マーケティング担当者だけでなく、商品企画・UXデザイン・カスタマーサポート・経営層まで、あらゆる職種の人が共通言語として使えるのがこのフレームワークの強みです。

カスタマージャーニーが今こそ重要な理由

なぜ今、カスタマージャーニーがここまで注目されているのでしょうか。その背景には、顧客と企業の接点(タッチポイント)が急速に複雑化・多様化しているという現実があります。

かつて、顧客が商品を知るルートはテレビCMや新聞広告、店頭での陳列がほとんどでした。しかし現代では、SNS・YouTube・検索エンジン・口コミサイト・インフルエンサー・メールマガジン・LINE公式アカウント・実店舗・チャットボット・カスタマーサポートなど、無数のタッチポイントが存在します。顧客はこれらを自由に行き来しながら情報収集をし、意思決定をしています。

この複雑な顧客行動を整理し、「どの接点でどんな体験が生まれているか」「どこで顧客がつまずき、どこで感動しているか」を可視化するために、カスタマージャーニーというフレームワークが必要とされているのです。カスタマージャーニーとは、複雑化した顧客体験を組織全体で共有するための共通言語でもあります。

BtoCとBtoBでのカスタマージャーニーの違い

カスタマージャーニーはBtoC(消費者向け)だけでなく、BtoB(企業向け)のビジネスでも活用されています。ただし、両者では顧客の意思決定プロセスが大きく異なります。

BtoCでは、個人の感情や衝動、口コミの影響が大きく、「認知→興味→比較→購入→リピート」という比較的シンプルなジャーニーになりがちです。一方でBtoBでは、「課題認識→情報収集→ベンダー選定→上司への稟議→契約交渉→導入→定着支援→継続評価」のように、複数の意思決定者が関与する複雑なジャーニーになります。担当者が感動しても、上司が承認しなければ購入に至らない、というBtoB特有の構造を無視したカスタマージャーニーは機能しません。

いずれの場合も、カスタマージャーニーとは「顧客の立場から体験を再現する作業」であることに変わりはありません。どのような業種・規模であっても、顧客視点に立ち返ることが、ビジネス改善の第一歩です。

カスタマージャーニーマップの構成要素と種類

マップを構成する6つの基本要素

カスタマージャーニーを視覚的に整理したものが「カスタマージャーニーマップ」です。このマップは通常、横軸にフェーズ(時間の流れ)、縦軸に各要素を配置した表形式で作成します。主な構成要素は以下の6つです。

①フェーズ(段階):顧客の体験を「認知→検討→購入→利用→継続」などの段階に分けます。BtoBでは稟議・承認・導入フェーズなど、業種に合わせてカスタマイズします。

②タッチポイント:各フェーズで顧客がブランドや商品と接触する場面です。SNS広告・検索結果・LP・メール・電話・店頭・チャットサポートなど多岐にわたります。

③顧客の行動:各タッチポイントで顧客が実際に取る行動を記述します。「Googleで検索する」「比較サイトを見る」「無料体験を申し込む」のように、主語を顧客にして書くことがポイントです。

④顧客の思考・感情:行動の裏にある顧客の内なる声です。「本当に効果があるのか不安」「想像より高い…」「これは使いやすい!」といったリアルな声を書き込みます。

⑤感情曲線:顧客の感情の高低を折れ線グラフで表現します。どこでポジティブになり、どこでネガティブになるかを視覚的に把握できます。感情の”谷”がアイデアの宝庫です。

⑥課題・機会:感情が下がっている場面を「課題」として整理し、そこに改善・強化の「機会」が潜んでいることを示します。ここから具体的なアクションが生まれます。

現状マップと理想マップを使い分ける

カスタマージャーニーマップには「現状マップ(As-Is)」と「理想マップ(To-Be)」の2種類があり、目的に応じて使い分けることが重要です。

現状マップは、今の顧客体験をありのままに記録したものです。顧客インタビュー・アンケート・サポートへの問い合わせ内容・ウェブ解析データなどを根拠にして作成します。ここには、企業側が気づいていなかった課題や、見落としていた感情の揺れが隠れています。「こんなところでお客様が困っていたとは!」という驚きの発見こそが、現状マップの最大の価値です。

一方の理想マップは、「顧客にこういう体験をしてほしい」という目標状態を描くものです。現状マップで明らかになった課題を解決した姿を描くことで、施策のロードマップが自然に見えてきます。まず現状マップで現実を直視し、次に理想マップで目指すべき姿を描く――この順番を守ることが、効果的なカスタマージャーニー活用の鉄則です。

デジタルツールと紙ベースの使い分け

カスタマージャーニーマップを作成するツールとしては、付箋と模造紙を使うアナログ方式と、MiroやFigma・Notionなどのデジタルツールを使う方式があります。それぞれに一長一短があります。

アナログ方式は、チームで一堂に集まって付箋を貼りながら議論するため、参加者の熱量が高まりやすく、「この付箋何?」という会話から予期せぬ気づきが生まれやすいというメリットがあります。一方でデジタルツールは、リモートチームでもリアルタイムに共同編集でき、データを蓄積・更新しやすいというメリットがあります。

初めてカスタマージャーニーマップを作るチームには、まず付箋と模造紙でのワークショップをおすすめします。全員が身体を動かして参加することで、「自分たちで作ったマップ」という当事者意識が生まれ、その後の改善活動への取り組みが変わってきます。

カスタマージャーニーマップの作り方――実践3ステップ

ステップ1:ペルソナを具体的に設定する

カスタマージャーニーマップ作成の第一歩は、ペルソナ(仮想顧客像)の設定です。「すべての顧客」を対象にしようとすると、マップが曖昧になり、具体的な改善策が見えにくくなります。

ペルソナは、年齢・性別・職業・家族構成・趣味・価値観・悩み・情報収集手段・よく使うSNSなどをリアルに設定します。たとえば「32歳・女性・フルタイム共働き・3歳と1歳の子持ち・育児と仕事の両立で慢性的なストレスを抱えている・スマホで情報収集することが多い」のように、一人の人物として肉付けします。

ペルソナ設定で大切なのは、実際の顧客インタビューや観察をベースにすることです。担当者の思い込みだけで作ったペルソナは、リアルな顧客体験とズレが生じやすく、マップ全体の精度を損なってしまいます。できれば実際のお客様数名に話を聞いてからペルソナを設定しましょう。少人数のインタビューでも、驚くほどリアルな気づきが得られます。

ステップ2:タッチポイントを洗い出す

ペルソナが固まったら、そのペルソナが商品・サービスと接触するすべてのタッチポイントを洗い出します。この作業はチームで付箋を使って行うと効果的で、「自分は知らなかったタッチポイント」が次々と出てきます。

認知フェーズであれば、「Instagramのリールで広告を見かける」「友人にすすめられる」「Googleで偶然検索結果に表示される」「会社の同僚が使っているのを目にする」など。検討フェーズであれば、「公式サイトで料金を確認する」「口コミサイトで評価を読む」「無料トライアルを申し込む」「問い合わせフォームで質問する」など。

この段階でのポイントは、企業目線ではなく顧客目線で書くことです。「自社がSNS広告を配信する」ではなく、「顧客がSNSでふと広告を見かける」というように、主語を顧客にすることで体験の解像度が上がります。実際のお客様がどのようなルートでたどり着いたかを知るために、購入後のアンケートや初回商談でのヒアリングを活用すると精度が高まります。

ステップ3:感情曲線を描いて谷を発見する

タッチポイントが出そろったら、各場面での顧客の感情をスコアリングして感情曲線を描きます。「+5(非常にポジティブ)〜-5(非常にネガティブ)」のような数値スケールを使うと視覚化しやすいです。

感情が下がっているポイント(感情の谷)こそが、改善の種が埋まっている場所です。「なぜここで感情が下がるのか?」を深掘りすることで、具体的な改善アイデアが生まれます。たとえば「申込フォームを入力しているとき」に感情が落ちているなら、「入力項目が多すぎる」「なぜこの情報が必要か説明がない」「エラーメッセージがわかりにくい」などの原因が浮かび上がります。

反対に、感情が高まっているポイント(感情の山)は、顧客が特に価値を感じている場面です。その体験をさらに強化したり、他のフェーズに横展開したりすることで、顧客満足度を底上げできます。感情曲線を描くだけで、チームの「顧客理解の解像度」が劇的に上がるのを実感できるはずです。

カスタマージャーニーのイメージ

カスタマージャーニーを活用したアイデア発想と顧客視点

感情の谷から課題を掘り起こしてアイデアを出す

カスタマージャーニーマップが完成したら、いよいよアイデア発想フェーズです。最も重要なのは、感情曲線の「谷」に焦点を当てることです。谷には必ず、顧客が困っている・迷っている・不満を抱えている理由が隠れています。

谷の原因を特定したうえで、「この課題を解決するにはどうしたらいいか?」という問いかけからアイデアを出していきます。「申込フォームで離脱が多い」という課題に対して、「入力項目を半分に減らす」「入力途中に安心感を与えるメッセージを表示する」「SMS認証をなくす」など、具体的な解決策が次々と出てきます。重要なのは「なんとなく新機能を追加する」のではなく、「このお客様のこの場面のこの感情を改善する」という目的を持ってアイデアを出すことです。

カスタマージャーニーは、アイデア発想に「顧客への答え合わせ」の機会を与えてくれます。思いつきでアイデアを出すのではなく、顧客の体験から課題を特定し、その課題を解決するためにアイデアを出す。このプロセスを習慣化することで、現場で使えるアイデアが格段に増えていきます。

ベイブレード開発に学ぶ顧客観察の力

ここで、私が実際に経験したおもちゃ開発の話をさせてください。世界累計5億個以上を販売した「ベイブレード」が生まれる前、私たちは「すげゴマ」「バトルトップ」という失敗を経てきました。

バトルトップは発売したものの、なかなか売れませんでした。「なぜ売れないのか?」を分析するために、子どもたちの行動と感情を丁寧に観察しました。今でいうカスタマージャーニーの視点で顧客体験を辿ったのです。すると、重大な課題が見えてきました。バトルトップは1種類しかなかったため、友達が手に入れても同じものになってしまい、2個目を買う理由がないということです。子どもにとって「持っているものを友達に見せて自慢する→友達が欲しくなる→友達も買ってもらう→友達と一緒に遊ぶ」というジャーニーが回らなかったのです。

この課題発見をもとに、「バトルできる」「改造できる」という2つの要素を組み合わせてベイブレードが生まれました。一発で正解にたどり着いたのではなく、失敗を分析し、仮説を立て、試作を繰り返したプロセスの結果です。顧客の行動と感情を丁寧に観察し、課題を特定して改善するというカスタマージャーニーの本質が、ここに凝縮されています。

チームで協力してマップを作るワークショップ手法

カスタマージャーニーマップは、チームで協力して作ることで真価を発揮します。営業・開発・マーケティング・カスタマーサポートなど、異なる部署のメンバーが集まることで、一人では気づけない多様な視点が得られます。

私がワークショップをファシリテートするとき、よく見られる光景があります。営業担当者は「お客様は価格にシビアです」と言い、開発担当者は「機能の多さを評価している」と言い、サポート担当者は「使い方がわからないという問い合わせが多い」と言う。これが初めて同じテーブルで議論されることで、「うちの製品はわかりにくい」という共通認識が生まれ、改善の方向性がそろっていきます。

ワークショップは2〜3時間で十分です。ファシリテーターが「このフェーズで顧客はどう感じているか?」と問いかけながら付箋を貼り出す形式がおすすめです。カスタマージャーニーを使ったワークショップは、部門間の壁を取り払い、顧客視点で組織全体を動かすための強力な道具です。

カスタマージャーニーを組織に根付かせるコツ

継続的に更新し続ける仕組みをつくる

カスタマージャーニーマップは、一度作れば完成ではありません。市場環境・競合状況・顧客のライフスタイルは常に変化しているため、定期的に見直して更新する仕組みが必要です。作ったまま引き出しの中に眠らせてしまうのが、最もよくある失敗パターンです。

おすすめは、四半期に一度(3ヵ月に1回)、チームでマップを見直す時間を設けることです。新しい顧客インタビュー、アクセス解析データ、カスタマーサポートへの問い合わせ傾向などをもとに、タッチポイントや感情曲線を更新していきます。また、マップを常に壁に貼り出しておくことで、日常の業務判断の場面でも顧客視点を意識しやすくなります。重要なのは、マップを「完成させること」ではなく「使い続けること」です。

更新の際には、前回のマップとの差分を確認することが大切です。「3ヵ月前と比べてこのフェーズの顧客感情が改善されている」という変化を可視化することで、改善施策の効果を実感でき、チームのモチベーションも高まります。カスタマージャーニーは「生きた地図」として育てていくものです。

データと定性情報を組み合わせて精度を高める

カスタマージャーニーマップの精度を高めるには、定量データと定性情報の両方を組み合わせることが重要です。どちらか一方だけでは、課題の全体像が見えてきません。

Googleアナリティクスや購買データから「このページで70%のユーザーが離脱している」という事実が分かっても、「なぜ離脱するのか」はデータだけではわかりません。実際のお客様にインタビューして初めて「料金ページに不安になる表現があった」「比較表が見づらかった」という本音が出てきます。数字で現象を捉え、インタビューで原因を掘り下げる。このふたつを組み合わせることで、カスタマージャーニーはリアルな改善ツールに進化します。

社内でアンケートや簡単な顧客インタビューを実施する文化を少しずつ育てていきましょう。月1回、5人のお客様に15分ずつ話を聞くだけでも、マップの精度は劇的に上がります。そしてその気づきを組織全体で共有することで、「顧客視点で考える組織文化」が少しずつ根付いていきます。カスタマージャーニーとは、最終的にはそのような文化を育てるためのツールでもあるのです。

カスタマージャーニーのイメージ

まとめ

いかがでしたか。カスタマージャーニーとは、顧客が商品・サービスと出会ってから継続利用するまでの体験を”旅”として可視化したフレームワークです。感情曲線を描いて「谷」を見つけることで課題が明確になり、そこから具体的な改善アイデアが生まれます。

マップ作成の基本は、①ペルソナを設定する、②タッチポイントを洗い出す、③感情曲線を描いて谷を発見する、の3ステップです。チームで協力して作り、定期的に更新し続けることで、顧客視点が組織全体に浸透していきます。ベイブレード開発のエピソードでお伝えしたように、顧客の行動と感情を丁寧に観察し、失敗を分析して仮説を立て、試作を繰り返すことがヒット商品・ヒットサービスへの最短ルートです。ぜひカスタマージャーニーを活用して、皆さんのビジネスに新しいアイデアの風を吹き込んでください。

アイデア総研について

アイデア総研の研修風景
実際の研修・ワークショップの様子

アイデア総研は、カスタマージャーニーを活用したアイデア発想・デザイン思考の研修・ワークショップを全国で提供しています。代表の大澤は、世界累計5億個以上を販売したベイブレード・人生銀行・夢見工房の開発者であり、5,000人以上への講義実績を持ちます。大阪公立大学・千葉大学・筑波大学・法政大学でも講義を行っており、著書に『おもちゃ流企画術』(実業之日本社)があります。対面・オンライン・ハイブリッドに対応し、全国どこへでも伺います。研修時間は1時間〜6時間まで柔軟に対応可能ですので、まずはお気軽にご相談ください。

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