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フィードバックの伝え方|SBIモデルで部下が動く言葉の使い方

こんにちは、アイデア総研の大澤です。

「部下に注意したら、その後モチベーションが下がってしまった」「フィードバックを伝えたつもりなのに、行動が変わらない」「ポジティブなことを言っても、相手に響いていない気がする」——こういった悩みを抱えるマネージャーや先輩社員の方は非常に多いです。

フィードバックの伝え方は、ビジネスにおける最も重要なコミュニケーションスキルのひとつでありながら、多くの人が体系的に学ぶ機会を持てていません。「なんとなく」「感覚で」伝えているフィードバックが、意図とは逆の効果を生むことも少なくありません。

この記事では、フィードバックの伝え方を科学的に整理したSBIモデルをメインに、部下や同僚が自然と動きたくなる言葉の使い方まで、具体的にお伝えします。

フィードバックのイメージ

フィードバックの伝え方が難しい理由

まず、なぜフィードバックの伝え方はこれほど難しいのでしょうか。その理由を理解することが、改善への第一歩です。

フィードバックとは何か?正しく定義しよう

フィードバック(feedback)とは、相手の行動や結果に対して、観察した事実・そこから生じた影響・期待する変化を伝えるコミュニケーションです。「批判すること」でも「褒めること」でもなく、「相手の成長と変化を促すために、観察した事実を共有すること」がフィードバックの本質です。

フィードバックには大きく「ポジティブフィードバック(うまくいっていることを伝える)」と「コンストラクティブフィードバック(改善点を伝える)」の2種類があります。日本では後者を「ネガティブフィードバック」と呼ぶことが多いですが、「改善を促す建設的なフィードバック」というニュアンスで捉えると、伝え方の工夫がしやすくなります。

重要なのは、どちらのフィードバックも「相手のため」であるという姿勢です。批判や叱責は「自分の感情」を表現していることが多いですが、フィードバックは「相手の成長のために事実を共有すること」です。この違いを意識するだけで、フィードバックの伝え方は大きく変わります。

なぜフィードバックがうまくいかないのか

フィードバックがうまく機能しない最大の理由は、「評価(判断)」と「観察(事実)」が混在していることです。「あなたは積極性が足りない」という言葉は評価です。一方、「先週の会議で発言が一度もなかった」という言葉は観察です。人は評価を受けると防衛反応が起き、素直に受け取れなくなります。しかし観察(事実)を共有されると、反論がしにくく、自分の行動を客観的に見られます。

また、フィードバックのタイミングが問題になることもあります。問題が起きてから長期間経過してから伝えても、当事者の記憶が薄れていて効果が低下します。逆に、怒りや動揺が冷めていない状態で伝えると、感情的な批判になってしまいます。適切なタイミングを見極めることが、フィードバックの伝え方の重要な要素です。さらに、「一方的に話す」フィードバックは相手の主体性を奪います。フィードバックは「対話」であり、相手が自分なりの解釈や意見を持てる空間を作ることが大切です。

SBIモデルとは何か?基本を理解しよう

SBIモデルは、アメリカのリーダーシップ教育機関「Center for Creative Leadership(CCL)」が開発したフィードバックの構造モデルです。S(Situation:状況)・B(Behavior:行動)・I(Impact:影響)の3要素でフィードバックを構成することで、相手が受け取りやすく、行動変容につながりやすい伝え方が実現します。

S(Situation)——いつ・どこで起きたのかを特定する

SBIモデルの最初のSは「Situation(状況)」です。フィードバックの対象となる具体的な状況・場面を特定します。「最近」「いつも」「よく」という曖昧な表現ではなく、「先週火曜日の部門会議で」「昨日の顧客への提案プレゼンで」というように、日時・場所・状況を具体的に述べます。

状況を特定する理由は、フィードバックを「特定の行動に対するもの」として明確にするためです。「いつも遅れてくる」という言い方では、相手は「いつも?そんなことないけど」と反論したくなります。しかし「今週月曜日の9時からの朝礼に10分遅れてきた」と状況を特定すれば、事実の確認から始められます。状況が明確なほど、フィードバックが「一般的な批判」ではなく「特定の出来事についての対話」として受け取られます。

B(Behavior)——具体的な行動だけを伝える

次のBは「Behavior(行動)」です。状況の中で観察した「具体的な行動」だけを伝えます。ここでの重要なポイントは、「解釈・評価・推測」を含めず、目に見えた行動事実だけを述べることです。

「やる気がなさそうだった(評価・解釈)」ではなく、「会議中、一度も発言しなかった(行動事実)」と言います。「雑な仕事をした(評価)」ではなく、「報告書に3か所の数値の誤りがあった(行動事実)」と言います。行動事実は誰が見ても同じように確認できるものであることが理想です。この「判断を含まない行動の記述」が、SBIモデルの核心です。相手が「確かにそうでした」と認めやすくなり、防衛反応が起きにくくなります。

I(Impact)——その行動がどんな影響を与えたかを伝える

最後のIは「Impact(影響)」です。B(行動)が生み出した具体的な影響を伝えます。影響には「チームへの影響」「顧客への影響」「業務への影響」「自分(フィードバックを伝える人)が受けた影響」などがあります。

「あなたが会議で発言しなかった(B)ことで、他のメンバーがあなたの意見を聞けなかった(I)」「報告書に誤りがあった(B)ことで、顧客から信頼を損なうリスクが生じた(I)」という形で伝えます。影響を伝えることで、相手が自分の行動の「結果」を実感できます。「なぜその行動が問題なのか」が明確になるため、相手が「変えてみよう」という気持ちになりやすくなります。Iを具体的・客観的に伝えることが、フィードバックを「行動変容」につなげる鍵です。

SBIモデルを使ったフィードバックの実践例

SBIモデルの理論を理解したら、次は実践例を見てみましょう。ネガティブフィードバックとポジティブフィードバックの両方を見ていきます。

コンストラクティブ(改善を促す)フィードバックの例

シーン:チームメンバーが締め切りを守れなかった場面。

SBIモデルを使わない伝え方の例:「最近、仕事に対する責任感が足りていないんじゃないかと思う。もっとちゃんとしてほしい。」——この伝え方は評価と曖昧さが含まれており、受け手は防衛的になります。

SBIモデルを使った伝え方の例:「今週の水曜日、○○プロジェクトの進捗報告(S)が、約束の15時から2時間遅れて届きました(B)。そのため、私が顧客に状況を説明できず、顧客から問い合わせの電話が来てしまいました(I)。今後はどのように進めるつもりか、一緒に考えてもいいですか?」

この例では、状況・行動・影響が明確に分けられており、相手が「なるほど、それは申し訳なかった」と受け取りやすくなっています。最後に「一緒に考えましょう」という姿勢を示すことで、対話を促します。SBIモデルのフィードバックの伝え方は、責める言葉をゼロにするのではなく、事実に基づいて伝えることで相手の主体性を引き出すことが目的です。

ポジティブフィードバックの例

SBIモデルはポジティブフィードバックにも非常に効果的です。「頑張ったね」「よかった」という漠然とした褒め言葉は、相手に「何がよかったのか」が伝わりません。SBIモデルを使うことで、褒め言葉が「次も同じ行動をしよう」という動機付けになります。

シーン:メンバーが難しい顧客への対応を上手にこなした場面。

SBIモデルを使ったポジティブフィードバックの例:「今日のABC社との交渉(S)で、相手の懸念点に対して具体的なデータを示しながら丁寧に回答していましたね(B)。おかげで顧客が安心し、契約に向けて前向きな姿勢を見せてくれました(I)。あの対応は素晴らしかったです。」

具体的な場面・行動・影響が明確なため、相手は「何がよかったのか」を具体的に理解できます。こうしたポジティブフィードバックは、相手の自己効力感を高め、同様の行動を繰り返す動機づけになります。

部下が動くフィードバックの伝え方のコツ

SBIモデルを使いこなしながら、さらに効果的なフィードバックの伝え方をするためのコツをご紹介します。

フィードバックは「対話」——一方的に終わらせない

最も重要なコツは、フィードバックを「一方的なメッセージ伝達」で終わらせないことです。SBIモデルでS・B・Iを伝えた後、必ず「あなたはこのことについてどう思いますか?」という問いかけをしましょう。

相手の視点から見た事情や背景があることが多く、それを聴かずにフィードバックだけ伝えても、「でも実は…」という未消化な感情が残ります。対話を通じて、相手が自分で気づき、自分で次のアクションを決めることが、最も強い行動変容を生みます。「フィードバックは、上司が教え込むものではなく、部下が自分で考えるきっかけを与えるもの」という視点が、フィードバックの伝え方を根本から変えてくれます。

タイミングと頻度——フィードバックの効果を最大化する

フィードバックの伝え方において、内容と同じくらいタイミングと頻度が重要です。フィードバックは「起きてから72時間以内」が効果的とされています。人の記憶は時間とともに薄れ、状況の詳細が曖昧になります。「あのとき」「先月のこと」では、具体的な対話が難しくなります。

また、フィードバックは「一度の大きな評価」よりも「小さな頻度での継続」の方が効果的です。年に一度の人事評価でまとめてフィードバックするより、週一回の1on1ミーティングでこまめに伝える方が、行動の変容が起きやすいことが研究でも示されています。「フィードバックが日常的な文化」になっている職場では、メンバーの成長速度が他の職場と明らかに異なります。

フィードバックのイメージ

ベイブレード開発に見るフィードバックの力

おもちゃ開発の現場でも、フィードバックは常に重要な役割を果たしていました。私が体験した事例をご紹介します。

市場からのフィードバックを製品改善に活かす

「すげゴマ」が売れなかった、「バトルトップ」が伸び悩んだ——これらは市場からの「コンストラクティブフィードバック」です。「なぜ売れなかったか」という問いに向き合い、「1種類しかないから2個目を買う理由がない」という具体的な行動(購買行動)と影響(売上不振)を分析することが、次の開発の方向性を決めました。

これはまさにSBIモデルの考え方です。S(どの状況で)・B(どんな購買行動が観察されたか)・I(それがどんな売上影響をもたらしたか)を分析することで、「バトルできる×改造できる」というベイブレードの核心的価値が生まれました。一発で正解を出したのではなく、失敗を分析し仮説を立てて試すプロセスの繰り返しでした。フィードバックを「失敗の証明」ではなく「成功への道しるべ」として活用する姿勢が、5億個のヒット商品を生み出したのです。

チームへのフィードバック文化が開発を加速させる

商品開発の現場では、チームメンバー同士のフィードバックも非常に重要でした。「このデザインはどうか」「この機能は本当に必要か」という日常的なフィードバックが、試作品の品質を高めていきます。重要なのは、批判的な意見も「評価」ではなく「観察と影響」として伝える文化を作ることです。「このデザインはダサい(評価)」ではなく「このデザインだと、子どもが欲しそうに見えないと感じた(観察+影響)」という伝え方が、チームの心理的安全性を保ちながら開発の質を高めます。フィードバックの伝え方を学ぶことは、チームの創造性を引き出すことにも直結するのです。

フィードバックを受ける側の心構え

フィードバックの伝え方を学ぶことと同じくらい重要なのが、「フィードバックを受ける側」の心構えです。どれだけ上手に伝えられても、受け手が防衛的になってしまえば、フィードバックの効果は半減します。

防衛反応を理解し、乗り越える

人は自分の行動を否定されると、脳が「脅威」と感知し、防衛反応を示します。これは生物学的な反応で、意志の力だけでは簡単にはコントロールできません。「でも…」「そんなつもりじゃなかった…」「あのときは事情があって…」という反応が出てしまうのは、人間として自然なことです。

大切なのは、この防衛反応が起きていることに自分で気づくことです。「あ、今自分は防衛しようとしているな」と気づくだけで、少し客観的になれます。フィードバックを受けたとき、まず「ありがとうございます」と受け取る練習をすることが効果的です。同意するかどうかは後で考えればいい。まずは「伝えてくれた事実」に感謝する姿勢が、フィードバックを成長の資源に変える第一歩です。

フィードバックを「ギフト」として捉える文化を作る

「フィードバックはギフト(贈り物)である」という考え方が、心理的安全性の高い職場では浸透しています。フィードバックを「批判」や「評価」ではなく「あなたの成長を願って伝えてくれる情報」として捉えると、受け取り方が変わります。

この文化を職場全体に広げるためには、上司が率先して「私へのフィードバックもください」という姿勢を示すことが重要です。上司が自分へのフィードバックを積極的に求めることで、「フィードバックは双方向のもの」「誰もが成長できる」というメッセージが職場に伝わります。フィードバックを受けることが「恥」ではなく「成長の機会」として認識される職場では、個人の成長速度もチームの生産性も大きく向上します。フィードバックの伝え方と受け方を両方学ぶことで、初めてフィードバック文化が根付くのです。

フィードバックと評価制度を連動させる

フィードバックの伝え方を組織全体で改善するためには、人事評価制度との連動が重要です。年1〜2回の人事評価だけでは、フィードバックの効果は限定的です。「評価の時期だけ話す」のではなく、「日常的にフィードバックを行い、評価はその集大成」という考え方に切り替えることで、メンバーが驚くような改善が生じます。

360度フィードバックの活用

近年、多くの企業が「360度フィードバック(多面評価)」を導入しています。上司だけでなく、同僚・部下・他部署のメンバー・顧客など、様々な立場からのフィードバックを収集する手法です。360度フィードバックのメリットは、一人の上司が見えていない面を他者が補完できることにあります。上司には報告を欠かさないが、後輩には横柄な態度を取っているメンバーがいるとしたら、上司だけのフィードバックでは気づけません。

一方で、360度フィードバックを導入する際には注意も必要です。フィードバックの質が問われる——「SBIモデルの伝え方」を全員が理解していなければ、曖昧な評価や感情的な言葉が並ぶだけになります。事前にフィードバックの伝え方のトレーニングを行うことが、360度フィードバックを成功させる前提条件です。SBIモデルを全社員が理解したうえで360度フィードバックを実施することで、個人の盲点に気づく機会が生まれ、組織全体の成長速度が上がります。

1on1ミーティングとフィードバックの組み合わせ

日常的なフィードバックの場として最も効果的なのが、1on1ミーティングです。週1回・30分の1on1を定期開催することで、フィードバックが「特別なイベント」ではなく「当たり前のこと」として定着します。1on1の場では、「先週の仕事でよかったことは?」「改善できそうなことは?」という問いかけから始め、SBIモデルを使った具体的なフィードバックを双方向で行います。フィードバックの伝え方と1on1の進め方を組み合わせることで、職場の成長文化が確実に育まれていきます。

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まとめ

いかがでしたか。フィードバックの伝え方を変えるための最強のフレームワークが、SBIモデルです。S(状況)・B(行動)・I(影響)の3要素を意識するだけで、批判になりがちだったフィードバックが「事実に基づいた建設的な対話」に変わります。

SBIモデルを使ったフィードバックの伝え方のポイントをおさらいすると、①具体的な状況・日時・場面を特定する、②評価や解釈を含まず観察した行動事実だけを述べる、③その行動がどんな影響を与えたかを伝える、④伝えた後は相手の意見を聴く対話にする、の4点です。そして、フィードバックは日常的・継続的に行うことで初めて文化になります。SBIモデルを習慣化することで、あなたのチームの成長速度は確実に上がります。ぜひ次の1on1や会議で試してみてください。

アイデア総研について

アイデア総研の研修風景
実際の研修・ワークショップの様子

アイデア総研は、フィードバック・コーチング・マネジメントコミュニケーションをテーマにした研修・ワークショップを全国で提供しています。代表の大澤は、ベイブレード(世界累計5億個)・人生銀行・夢見工房の開発者であり、5,000人以上への講義実績を持ちます。大阪公立大学・千葉大学・筑波大学・法政大学でも講義を行っており、著書に『おもちゃ流企画術』(実業之日本社)があります。対面・オンライン・ハイブリッドに対応し、全国どこでも1時間〜6時間でご対応可能です。「フィードバックの伝え方をチームに浸透させたい」というご要望があれば、ぜひお気軽にご相談ください。