研修担当者様へ

研修の内製化とは|メリット・デメリットと外部委託との使い分け

こんにちは、アイデア総研の大澤です。

「研修を自社でやるべきか、外部に任せるべきか」——人事・研修担当者の方からよく聞かれる悩みのひとつです。近年、「研修の内製化」というキーワードが急速に注目を集めています。コスト削減や自社ノウハウの蓄積、自社文化の浸透といった観点から関心が高まっていますが、内製化すれば何でもうまくいくわけではありません。内製化には明確なメリットがある一方で、見落とされがちなデメリットや落とし穴も存在します。

この記事では、研修を内製化するメリット・デメリットを整理した上で、外部委託との賢い使い分け方、そして内製化を成功させるための実践的なステップまでを体系的に解説します。「研修 内製化 メリット」というテーマで情報を探している人事担当者の方に、実際に使える判断軸と実行手順をお届けします。

「とにかく内製化が流行っているからうちもやろう」という発想ではなく、自社の状況と研修の目的に応じた冷静な判断が、結果として組織の人材育成を大きく前進させます。ぜひ最後までお読みください。

研修内製化のイメージ

研修の内製化とは何か|基本の定義から押さえる

研修の内製化とは、これまで外部の研修会社や講師に委託していた教育・研修プログラムを、自社のスタッフが主体となって設計・実施することを指します。社内に研修担当者や「トレーナー」を置き、講師役も社内の先輩社員・管理職・専門人材が担う形が一般的です。近年はeラーニングプラットフォームの普及により、内製化のハードルが以前と比べて大きく下がっています。

内製化の定義と外部委託との根本的な違い

外部委託とは、研修の企画・設計・実施のすべて、またはその一部を外部の研修会社や講師に任せる形式です。一方、内製化はこれらを自社で行います。ただし「完全内製化」と「一部内製化」があり、企画設計は社内で行い、特定テーマの登壇だけを外部講師に依頼するというハイブリッドなアプローチも多く見られます。内製化と外部委託の最大の違いは「誰が研修の主役を担うか」という点です。内製化では、自社の人事・研修担当者や現場の先輩社員が講師役・ファシリテーター役を担います。これにより、自社の文化・用語・業務事例をそのまま研修に盛り込めるというメリットが生まれます。

研修内製化が注目される時代背景

研修の内製化が注目される背景には複数の要因があります。第一に、外部研修費用の上昇です。専門的な外部講師への依頼費用は決して安くなく、受講者が増えるほどコストが膨らみます。第二に、自社固有の課題に対応したい要求の高まりです。汎用的な外部研修では「自社らしさ」が失われ、現場への適用が難しいという声も多く聞かれます。第三に、社内人材の育成担当者としての成長機会の創出です。研修を教える側に回ることで、担当者自身のスキルと自信が大きく向上するという副次的なメリットも注目されています。第四に、コロナ禍を経てオンライン学習のインフラが整備されたことで、内製のeラーニングコンテンツを低コストで作成・配信しやすくなったことも大きな追い風になっています。

内製化と外部委託、どちらが自社に向いているか

内製化か外部委託かの判断は、研修の目的・内容・実施頻度・社内リソースによって異なります。「社内のベテランが自社の業務知識を教える」という場面では内製化が力を発揮します。一方、「最新のDXトレンドや専門スキルを外部の第一人者から学ぶ」という場面では外部委託の方が効果的です。多くの企業にとって最適解は「内製化を軸にしながら、特定のテーマだけ外部に依頼する」というハイブリッドモデルです。「どちらか一択」ではなく、「研修の種類に応じた使い分け」という発想を持つことが重要です。また、内製化の準備が整っていない段階で無理に内製化を進めると、担当者が疲弊し、研修の質も下がるという最悪の結果を招くことがあります。

研修を内製化する5つのメリット

研修の内製化には、外部委託では得られない独自のメリットがあります。コスト面だけでなく、組織文化や人材育成の観点からも大きな価値を生み出します。内製化の導入を検討している担当者の方には、ぜひこのメリットを経営層に示して予算確保の根拠にしていただければと思います。

コストを大幅に削減できる

内製化の最も直接的なメリットはコスト削減です。外部講師への講師料・交通費・宿泊費、研修会社への企画費用、テキスト印刷費などを大幅に削減できます。特に、同じプログラムを繰り返し実施する場合(新入社員研修・階層別研修など)は、内製化によるコスト効果が顕著に現れます。初年度こそ内製化の準備コスト(担当者の研修受講費、教材作成費)がかかりますが、2年目以降は大幅なコスト削減が実現します。また、受講者が増えても追加費用が発生しない(または最小限で済む)点も、成長中の企業にとって大きなメリットです。外部に依頼し続けると「人数×単価」でコストが膨らみますが、内製化すれば固定コストに近い形で運営できるようになります。

自社の文化や事例をそのまま研修に盛り込める

外部研修の課題のひとつは、「自社の現場感」が伝わりにくいことです。内製化すると、自社の実際の業務事例・失敗談・成功ストーリーをそのまま研修素材として活用できます。「うちの会社でこういうことがあった」「この案件でこんなミスをした」という具体的なエピソードは、受講者の理解と記憶の定着を大きく促進します。また、自社のビジョン・バリュー・行動指針を研修の随所に自然に織り込むことができ、企業文化の浸透にも効果的です。特に、入社したばかりの新入社員に「この会社の人間になる」という感覚を醸成するには、自社の言葉で語られる内製研修の力が際立ちます。

社内にノウハウと人材育成力が蓄積される

外部委託を続けると、研修のノウハウは外部に蓄積され、社内には何も残りません。担当者が変わるたびに「また外部に依頼する」というサイクルが続きます。内製化を進めると、研修の設計力・ファシリテーション力・評価改善力が社内に蓄積されていきます。これは単なる「研修の内製化」を超えて、組織全体の「人材育成力」そのものの向上につながります。また、社内の先輩社員・管理職が講師役を担うことで、教える側の理解が深まり、リーダーシップスキルの向上という副次的な効果も生まれます。「教えることが最大の学び」という言葉は、研修の内製化においても真実です。

研修内製化のイメージ

研修を内製化する際の3つのデメリットと注意点

一方で、内製化には課題もあります。メリットだけを見て「とりあえず内製化しよう」と進めると、担当者が疲弊したり、研修の質が低下したりする事態を招きます。内製化を検討する際は、デメリットと向き合った上で判断することが重要です。

担当者の負担が大幅に増加する

内製化の最大のデメリットは、人事・研修担当者や現場の講師役への負担増加です。研修の企画・資料作成・当日の運営・事後フォローをすべて社内で行うとなると、通常業務との両立が難しくなります。特に、中小企業では研修担当者が人事・採用・労務と兼務していることが多く、内製化が担当者の疲弊につながるケースも珍しくありません。内製化を始める前に「誰が・いつ・どれくらいの時間をかけて取り組むのか」を明確に決めておくことが不可欠です。内製化の工数を「見える化」して、現業務とのバランスを経営層と合意した上で進めることが、持続可能な内製化の第一条件です。

外部の専門性・最新情報・刺激が得られない

内製化のもうひとつのデメリットは、外部の視点・最新情報・専門的なノウハウが入ってこなくなることです。自社の常識や慣習に染まった研修が繰り返されると、「そんなやり方が当たり前」という固定観念が強化されてしまいます。また、外部講師が持つ業界横断的な知見・最新のトレンド・他社事例といった刺激は、社内では再現できません。特に、DXや最新マネジメント手法など、専門性の高い領域を内製化しようとすると、内容の陳腐化が避けられません。内製化を進める場合でも、年に1〜2回は外部講師を招いて新鮮な視点を取り入れることを強くお勧めします。

研修の品質を一定に保つことが難しい

外部の研修会社はプロとして品質管理の仕組みを持っていますが、内製化すると品質の維持が課題になります。講師役の社員によって研修の質にばらつきが生じるというのは内製化あるあるの悩みです。Aさんが担当すると場が盛り上がるのに、Bさんが担当すると空気が重い——という事態は、外部講師の活用ではなかなか起きません。これを防ぐには、標準化されたファシリテーターガイドを整備する、定期的に担当者同士でフィードバックを実施する、年1回は受講者アンケートで研修の質を評価するという仕組みが必要です。「内製化=担当者任せ」にしない仕組みを設計することが、品質維持の鍵です。

研修の内製化と外部委託の賢い使い分け方

内製化か外部委託かは二択ではありません。研修の種類や目的によって使い分けることが、コストと効果の両方を最大化するアプローチです。ここでは具体的な使い分けの基準を解説します。

内製化に向いている研修の種類

内製化が効果を発揮しやすい研修には以下のようなものがあります。①自社業務・商品・サービスに関する知識研修(業界知識、商品説明スキルなど)、②自社の業務フロー・社内システムの操作研修、③新入社員への会社説明・オリエンテーション・企業文化の浸透研修、④管理職による部下育成ノウハウの共有(OJT研修)、⑤自社独自の接客・営業・クレーム対応スタイルの研修。「自社のことを一番よく知っているのは自社の人間」という領域では、内製化の優位性が際立ちます。また、繰り返し実施する機会の多い研修は、内製化によるコスト削減効果も大きくなります。

外部委託に向いている研修の種類

一方、外部委託が効果を発揮しやすい研修もあります。①ビジネスマナー・コミュニケーション・プレゼンテーションなど汎用ビジネススキル研修、②DX・AI・データ分析など専門技術研修、③コーチング・ファシリテーションなど高度な対人スキル研修、④管理職向けリーダーシップ・人材育成研修、⑤アイデア発想・創造性開発のワークショップ。外部の専門家だからこそ提供できる最新性・客観性・刺激がある領域では、外部委託が圧倒的に有利です。特に「社内の誰も教えられない領域」を内製化しようとすると、品質が保証できず、受講者の信頼を失う結果になりかねません。

ハイブリッドモデルで両者の強みを最大限に活かす

最も賢い選択は「ハイブリッドモデル」です。基礎的な知識研修・会社説明・業務フロー研修は内製化し、専門スキル研修・管理職研修・新しいテーマの研修は外部に委託するという組み合わせが、多くの企業で効果を発揮しています。このハイブリッドモデルを採用することで、コスト効率と研修の質を両立できます。また、外部講師の研修に社内の研修担当者がオブザーバーとして同席してファシリテーションやコンテンツ設計を学び、翌年から一部を内製化するという段階的なアプローチも非常に有効です。「内製化は一気にやるものではなく、少しずつ移行するもの」という意識を持つことが、ハイブリッドモデル成功の秘訣です。

研修を内製化するための実践ステップ

「内製化を進めたい」と思っても、いきなりすべてを内製化しようとすると失敗します。段階的に進めることが成功の鍵です。以下のステップを参考に、無理のない内製化を進めてください。

ステップ1:内製化する研修を絞り込む

まず、現在実施している研修の一覧を作り、それぞれを「内製化に向いているか」「外部委託のままがよいか」で仕分けします。最初の内製化対象としてお勧めなのは、「繰り返し実施される」「内容が自社固有である」「外部への依頼コストが比較的高い」という3つの条件を満たす研修です。新入社員研修のオリエンテーションパートや、自社製品・サービスの知識研修が、内製化のスタートとして最適なケースが多いです。最初から大きな研修の内製化を狙わず、小さく始めて成功体験を積むことが何より重要です。最初の成功体験が、組織全体の内製化への意欲と信頼感を高めます。

ステップ2:内製化担当者のスキルを高める

内製化の成否は、担当者のスキルにかかっています。研修を設計・実施するスキル(インストラクショナルデザイン、ファシリテーション、評価設計)は、一朝一夕には身につきません。担当者自身が外部の研修設計講座やファシリテーション研修を受けることで、内製化の質を高めることができます。また、外部講師が実施する研修にオブザーバーとして同席してファシリテーションを観察する「研修見学」も有効です。「研修担当者を育成する研修」に投資することが、内製化の基盤を作ります。人事担当者が「研修を学ぶ」ことへの投資を組織として認める文化が、内製化成功の前提条件です。

ステップ3:教材を作成し改善サイクルを回す

内製化の研修教材(テキスト・スライド・動画・ファシリテーターガイド)を作成したら、まず小規模で試験実施します。10〜20人規模のパイロット研修でフィードバックを集め、「わかりにくかった点」「もっと時間をかけてほしかった点」「不要だと感じた点」を洗い出して改善します。内製化の研修は1回目よりも2回目、2回目よりも3回目の方が必ずよくなります。最初から完璧を求めず、「まず動かして改善する」という姿勢で取り組むことが、内製化を軌道に乗せる最大のコツです。年1回の教材棚卸しルールを設けることで、内容の陳腐化も防ぐことができます。

研修内製化のイメージ

研修の内製化に取り組む企業が陥りやすい失敗パターン

内製化を進める上で、実際の現場でよく見られる失敗パターンがあります。これらを知っておくことで、同じ落とし穴を避けることができます。

「とりあえず内製化」からくる方向性のズレ

内製化の失敗パターンで最も多いのが、「目的が不明確なまま内製化を始める」ことです。「コスト削減のため」「なんとなく流行っているから」という動機だけで内製化を進めると、誰のための研修なのか、何を達成するための研修なのかが曖昧になります。内製化の目的を「コスト削減」に置くか「自社文化の浸透」に置くかで、取り組み方は大きく異なります。研修の内製化を検討する前に、「この研修を通じて、参加者にどんな変化を起こしたいのか」を言語化することが出発点です。目的が明確であれば、内製化すべきか外部委託すべきかの判断も自然とできるようになります。

担当者一人への過度な依存

内製化研修のよくある失敗として、「一人の熱心な担当者がすべてを抱え込む」というパターンがあります。その担当者が異動・退職した瞬間に、研修の仕組みが崩壊してしまうのです。内製化を組織に根付かせるためには、研修の設計・実施・改善を複数人で担う体制を早期に整えることが不可欠です。担当者が一人しかいない場合は、バックアップ担当者を育成するか、研修のマニュアルを整備して「誰でも実施できる状態」を目指すことを優先してください。内製化は「人」ではなく「仕組み」で回すことが持続可能性の鍵です。

担当者が今すぐできる実践チェックリスト

ここまで解説してきた内容を、実際の業務に落とし込むためのチェックリストをご紹介します。今の自社の状況を確認しながら、優先的に取り組むべき課題を絞り込んでみてください。

現状把握のチェックポイント

まず、自社の現状を正直に棚卸しするところから始めましょう。①現在実施している研修の一覧をリストアップできているか。②各研修について「内製化に向いているか外部委託向きか」を仕分けできているか。③研修担当者の工数が適切に管理されており、過負荷になっていないか。④研修実施後に受講者へのフォローアップができているか。⑤研修の効果を定量・定性で測定するしくみが整っているか。これらの質問に「はい」と答えられない項目が多いほど、改善の余地があります。一つひとつ丁寧に確認して、自社の人材育成の現在地を明確にしましょう。

次のアクションを一つ決める

チェックリストで課題が見えてきたら、次に取り組むアクションを一つだけ決めてください。「全部やろう」としたとき、何もできない状態に陥ることが最も多いパターンです。たとえば「まず新入社員研修のオリエンテーション部分を内製化してみる」「来月の1on1で管理職の研修に対する意見を聞く」「研修後のアンケートに行動変容に関する設問を1問追加する」——どれも小さく始められるアクションです。小さな行動を積み重ねることが、大きな変化を生む唯一の道です。ぜひ今日読んだこの記事から、一つのアクションを持ち帰ってください。

まとめ

いかがでしたか。研修の内製化について、基本的な定義からメリット・デメリット、外部委託との使い分け、実践ステップまで解説しました。

研修を内製化するメリットは、コスト削減・自社文化の浸透・ノウハウの蓄積と多岐にわたります。一方でデメリットとして担当者負担の増加・外部刺激の欠如・品質維持の難しさもあります。大切なのは「完全内製化か完全外部委託か」という二択で考えるのではなく、研修の目的と自社のリソースに合わせてハイブリッドモデルを採用することです。

まずは現在の研修を棚卸しして「内製化できそうなもの」を一つ選び、小さく始めてみてください。その一歩が、組織の人材育成力を着実に高める大きな変化のきっかけになります。「研修の内製化」は、担当者である皆さん自身の成長にもつながる取り組みです。ぜひ前向きに取り組んでみてください。

アイデア総研について

アイデア総研の研修風景
実際の研修・ワークショップの様子

研修の内製化や外部講師の活用についてお悩みの際は、アイデア総研にご相談ください。代表の大澤弘亘は、ベイブレード(世界累計5億個)・人生銀行・夢見工房の開発者として、5,000人以上への講義実績を持ちます。大阪公立大学・千葉大学・筑波大学・法政大学でも講義を担当し、著書『おもちゃ流企画術』(実業之日本社)を執筆しています。対面・オンライン・ハイブリッドに対応し、全国出講可能です。1時間〜6時間の幅広い形式でご依頼いただけますので、お気軽にご相談ください。