研修担当者様へ

研修のオンデマンド化とは|いつでも学べる環境を整える導入ステップ

こんにちは、アイデア総研の大澤です。

「日程が合わなくて、重要な研修を受けられなかった社員がいる」「同じ研修を毎回実施するコストと手間が大きい」「海外拠点や地方勤務のメンバーにも研修を届けたい」…こういったお悩みを抱える研修担当者の方は多いのではないでしょうか。

これらの課題を解決する有効なアプローチが研修のオンデマンド化です。研修のオンデマンド化とは、研修コンテンツを動画などのデジタル教材として提供し、受講者がいつでも・どこでも・自分のペースで学べる環境を整えることです。特定の日時に全員が集合する必要がなくなり、学習機会の均等化と学習効率の向上が期待できます。

この記事では、研修のオンデマンド化とは何か、メリット・デメリット、そして実際の導入ステップを詳しく解説します。研修のオンデマンド化を検討している研修担当者の方に、ぜひお読みいただきたい内容です。

研修のオンデマンド化のイメージ

研修のオンデマンド化とは何か

オンデマンド研修の定義と仕組み

オンデマンド研修(On-Demand Training)とは、事前に収録・制作したコンテンツを、受講者が任意のタイミングでアクセスして学習できる研修形式です。「需要(Demand)に応じて(On)」提供される、という意味からこの名称がつけられています。ライブ配信型の「リアルタイム研修」とは異なり、講師と受講者が同時に接続する必要がありません。

オンデマンド研修の主なコンテンツ形式には、「動画講義(レクチャービデオ)」「スライド+ナレーション(Eラーニング)」「テスト・クイズ」「シミュレーション教材」「テキスト・PDF教材」などがあります。これらをLMS(Learning Management System:学習管理システム)や動画プラットフォームを通じて配信することが一般的です。

研修のオンデマンド化が急速に普及した背景には、テクノロジーの進化だけでなく、働き方の多様化もあります。テレワーク・フレックスタイム・副業・海外勤務など、社員の働き方が多様化する中で、「特定の日時に全員が集合する研修」モデルの限界が明らかになってきています。オンデマンド研修はこの課題に対する現実的な解答のひとつです。

オンデマンド研修の種類と特徴

オンデマンド研修には、提供形式によってさまざまな種類があります。最もシンプルな形式が「録画型研修」です。対面やライブ研修を録画して配信するもので、制作コストが低く、既存の研修資産を活用しやすいのが特徴です。ただし、ライブ感が失われるため、受講者の没入感が低くなりやすい側面もあります。

次に「制作型Eラーニング」があります。専用ツールを使ってインタラクティブな教材を一から制作するもので、クイズ・分岐シナリオ・シミュレーションなどの要素を加えることができます。制作コストは高くなりますが、学習効果と受講者の関与度が高くなる傾向があります。

また近年普及している「マイクロラーニング」も重要な形式です。マイクロラーニングとは、1コンテンツ5〜10分程度の短い学習単位で提供するオンデマンド研修で、スキマ時間での学習に適しています。集中力が続きやすく、反復学習による定着効果も高いと言われています。スマートフォンでの受講にも適しており、現代のビジネスパーソンのライフスタイルにマッチした形式です。

ライブ研修・ハイブリッド研修との違いと使い分け

研修形式は「ライブ(同期型)研修」「オンデマンド(非同期型)研修」「ハイブリッド研修(両方の組み合わせ)」に大別されます。それぞれに特性があり、目的や内容によって使い分けることが重要です。

ライブ研修が特に向いているのは「対話・議論・コラボレーションが重要な研修」です。チームビルディング、リーダーシップ、コミュニケーション、アイデア発想など、リアルタイムの人との交流が学習効果の核心になるテーマは、ライブ形式が適しています。

オンデマンド研修が特に向いているのは「知識・スキルのインプット、法規制・コンプライアンス関連、標準化が必要なトレーニング」です。「全社員が同じ内容を正確に理解する必要がある研修」はオンデマンド化に最も適しています。ハイブリッド研修は、知識インプットをオンデマンドで行い、応用・実践・議論をライブで行うという「反転学習(フリップドラーニング)」のアプローチで特に効果を発揮します。

研修のオンデマンド化のメリットとデメリット

オンデマンド化の主なメリット

研修のオンデマンド化には、複数の重要なメリットがあります。第一のメリットは「学習機会の均等化」です。日程の都合がつかなかった社員、海外拠点勤務の社員、育児・介護で移動が難しい社員など、従来の集合研修では参加が難しかった人々にも研修を届けることができます。これは組織の学習機会の公平性を大きく高めます。

第二のメリットは「コストの最適化」です。一度コンテンツを制作すれば、何回・何人分でも追加コストなしに提供できます。会場費・交通費・講師費の反復コストがなくなり、長期的には大幅なコスト削減につながります。特に同じ内容を繰り返し実施する新入社員研修や資格取得研修では、オンデマンド化の費用対効果が高くなります。

第三のメリットは「自己ペース学習による効果向上」です。受講者は自分の理解度に合わせて、わかりにくい部分を何度でも視聴できます。集合研修では「わからないが質問できない」という受講者が一定数いますが、オンデマンドでは繰り返し視聴・テストの反復で理解を深めることができます。この自己ペース学習は、特に学習速度に個人差がある場合に有効です。

オンデマンド化のデメリットと対処法

一方で、研修のオンデマンド化にはデメリットもあります。最大のデメリットは「受講者のモチベーション維持が難しい」ことです。強制参加の集合研修と異なり、オンデマンドは「いつでもできる」が「ずっと後回し」になりがちです。受講完了率が低くなることが、オンデマンド研修の普遍的な課題です。

この対処法として有効なのは「期限の設定」「上長のフォローアップ」「ゲーミフィケーション(ポイント・バッジ・ランキング)の活用」です。期限を設けることで先送りを防ぎ、上長が受講状況を確認することで受講の緊急性を高めます。また、学習の進捗や達成を可視化・ゲーム化することで、継続的な学習意欲を高めることができます。

もうひとつのデメリットは「人との交流・議論から生まれる学びが得にくい」ことです。この対処法として有効なのが「ソーシャルラーニング」の組み込みです。LMSのコメント機能やSlack・Teamsなどのチャットツールを活用して、受講者同士が学びを共有・議論できる場を設けることで、オンデマンド学習に「対話」の要素を加えることができます。

オンデマンド化に向かない研修の見極め方

すべての研修をオンデマンド化すれば良いわけではありません。オンデマンド化に向かない研修を見極めることも重要です。向かない研修の典型は「体験型・実践型の研修」です。ロールプレイ、グループワーク、アイデアソン、チームビルディング…これらは対面のリアルタイムな交流から生まれる学びが本質であり、オンデマンド化では代替できません。

また「マインドセット変革を目的とした研修」もオンデマンド化には向きません。価値観や姿勢の変化は、他者との対話・フィードバック・感動体験から生まれることが多く、動画視聴だけでは起きにくいです。「知識・情報のインプット」はオンデマンドに、「体験・対話・変容」はライブ形式にという使い分けが、研修設計の基本方針として有効です。

研修のオンデマンド化を判断する際は、「この研修の学習成果を出すために、同期的な人との交流が不可欠か?」という問いを立てることが有効です。「不可欠ではない」と判断できる研修がオンデマンド化の候補となります。

研修のオンデマンド化の導入ステップ

ステップ1:オンデマンド化の目的と対象研修を選定する

研修のオンデマンド化を進める際の第一ステップは、「なぜオンデマンド化するのか」という目的を明確にし、「どの研修をオンデマンド化するか」を選定することです。目的が曖昧なまま進めると、制作コストを費やしてコンテンツを作ったものの、活用されないという失敗につながります。

オンデマンド化の目的として代表的なのは、「学習機会の均等化」「コスト削減」「学習効率の向上」「コンプライアンス研修の徹底」「新入社員教育の標準化」などです。目的が定まったら、その目的に最も合致する研修を選定します。最初のオンデマンド化対象は「繰り返し実施する頻度が高く、内容の変化が少ない研修」が最も費用対効果が高くなります。

選定の際は、現在の研修の「コスト」「受講率」「満足度」「効果測定結果」などのデータを参照することが有効です。特に受講率が低い研修や、毎回同じ講師・内容で実施されている研修は、オンデマンド化によって大きな改善が見込める候補です。

ステップ2:コンテンツを設計・制作する

対象研修が決まったら、オンデマンド用のコンテンツを設計・制作します。ここで重要なのは「対面研修をそのまま録画しない」ことです。対面研修をそのまま録画したコンテンツは、往々にして長くて冗長になり、オンデマンド受講者の離脱率が高くなります。オンデマンド向けには、内容を再構成する必要があります。

オンデマンドコンテンツ設計の基本原則は「短く・明確に・インタラクティブに」です。1単元あたりの長さは5〜15分を目安にし、各単元に明確な学習目標を設定します。可能であればクイズや確認テストを各単元の末尾に組み込むことで、受講者の理解度確認と学習の定着が促されます。

コンテンツ制作のクオリティについては、「完璧を求めすぎない」姿勢が重要です。プロのビデオ制作会社に依頼すれば高品質な映像が得られますが、コストと時間がかかります。最初はスマートフォンと無料ツールを使ったシンプルな制作から始め、効果を確認しながらクオリティを上げていく段階的なアプローチが現実的です。

ステップ3:配信プラットフォームを選定・整備する

コンテンツが完成したら、受講者に届けるための配信プラットフォームを選定します。代表的な選択肢として、「LMS(学習管理システム)」「動画配信プラットフォーム」「社内ポータル・イントラネット」があります。

LMSは受講管理・進捗追跡・テスト機能・修了証発行など、研修管理に特化した機能が充実しています。Moodle(無料オープンソース)、Cornerstone、Docebo、Talentcore、日本国内ではKnowledgeDelbなど多様な選択肢があります。規模と予算に合わせて選定することが重要です。

プラットフォーム選定では「受講者の使いやすさ」を最優先にすることが重要です。管理者にとって使いやすいシステムより、受講者にとって簡単にアクセスできるシステムの方が、受講率の向上につながります。社員が普段使っているツール(Teams、Slack、G Suite など)との連携も、アクセスしやすさを高める重要な要素です。

ステップ4:受講促進と効果測定の仕組みを作る

コンテンツとプラットフォームが整ったら、「受講してもらう仕組み」と「効果を測定する仕組み」を作ります。オンデマンド研修は「作っただけで受講されない」というリスクが最も大きい落とし穴です。受講促進のための仕組みを意図的に設計することが必要です。

受講促進の方法として有効なのは「受講期限の設定」「上長・HRからのリマインド」「受講率ランキングの公開」「受講に紐づくインセンティブ(資格取得・評価との連動)」などです。特に、受講状況を上長が把握できる仕組みを作ることで、部下の受講を促す上長のコミットメントが生まれます。

効果測定では、「受講完了率」「テスト正答率」「受講後アンケート(満足度・学習効果の自己評価)」「業務行動変容の観察(上長評価)」などを測定します。データに基づいてコンテンツを継続的に改善することが、オンデマンド研修の長期的な品質維持の鍵です。受講率が低い単元は内容・長さ・難易度を見直し、テスト正答率が低い部分は説明をわかりやすく改善する、というサイクルを回すことで、研修の品質が着実に向上します。

研修のオンデマンド化のイメージ

オンデマンド研修の成功事例と導入のポイント

コンプライアンス研修のオンデマンド化で受講率100%を達成した事例

オンデマンド研修の成功事例として最もよく見られるのが、コンプライアンス研修のオンデマンド化です。個人情報保護・ハラスメント防止・反社チェックなど、全社員が同じ内容を正確に理解する必要がある研修は、オンデマンド化に最も適したカテゴリです。ある製造業の企業では、年1回の集合型コンプライアンス研修をオンデマンド化したことで、受講率が従来の70%から100%近くに向上しました。

成功の要因は「期限設定」と「上長の受講確認」の組み合わせです。全社員に月末までの受講期限を設け、未受講者のリストを週次で上長に送付する仕組みを作りました。上長が部下の受講状況を把握・促進することで、「忙しくて後回し」という先送りが激減しました。オンデマンド研修の受講率向上には、コンテンツの品質向上だけでなく、組織的な受講促進の仕組みが不可欠であることを示す好例です。

また、コンテンツを10分以内の短いモジュールに分割したことで、「通勤電車の中で1モジュール」「昼休みの10分で2モジュール」という形でのスキマ時間活用が進み、業務時間を圧迫せずに受講完了できる環境が整いました。コンテンツの短さと受講しやすさが、継続率と完了率を高めた重要な要因でした。

オンデマンドとライブを組み合わせた反転学習の事例

近年注目を集めているのが「反転学習(フリップドラーニング)」を活用したオンデマンド研修の活用法です。従来は研修当日に行っていた知識インプットをオンデマンドで事前学習に移し、研修当日はディスカッションや実践演習に集中するというアプローチです。

ある金融機関での管理職向けリーダーシップ研修では、マネジメントの基礎知識をオンデマンド教材として事前に配信しました。受講者は研修1週間前までに動画とテストを完了し、研修当日は全員が同じベースラインの知識を持った状態でスタートします。これにより、研修当日の時間を「基礎解説」ではなく「自社への応用と実践演習」に100%充てることができ、研修の深みと実践性が格段に向上しました。

反転学習は、オンデマンドとライブのそれぞれの長所を最大化する設計です。オンデマンドの「いつでも・何度でも・自分ペースで」という長所でインプットを最適化し、ライブの「リアルタイムの交流・議論・実践」という長所でアウトプットを最適化する。この組み合わせが、研修全体の費用対効果を高めます。

オンデマンド化に向けた組織的な準備と文化づくり

オンデマンド研修の導入を成功させるためには、技術的な準備だけでなく、組織文化の準備も重要です。「研修は上司から言われて受けるもの」という受け身の学習文化がある組織では、自律的な受講が求められるオンデマンド研修の受講率が上がりにくい傾向があります。

オンデマンド化を成功させる組織文化の条件は「自律的な学習を奨励する文化」です。上司が「学んだことを共有してほしい」「自分で課題を見つけて学んでほしい」という期待をメンバーに伝え、学習行動を評価する文化を作ることが、オンデマンド研修の活性化の土台になります。

また、「学習時間の確保」も組織的に行う必要があります。「業務が忙しくてオンデマンド研修を受ける時間がない」という声は、多くの組織で聞かれる課題です。「月○時間は学習時間として確保する」というルールを組織として設定することで、オンデマンド研修を継続的に活用できる環境が整います。学習を「業務の合間の余暇活動」ではなく「業務の一部」として位置づける組織的な意思表示が、オンデマンド化の成功を支えます。

研修のオンデマンド化のイメージ

まとめ

いかがでしたか。研修のオンデマンド化とは、いつでも・どこでも・自分のペースで学べる研修環境を整えることです。学習機会の均等化・コスト最適化・学習効率向上という大きなメリットがある一方で、受講者モチベーション維持と学習の深化という課題もあります。

導入ステップは4つです。目的と対象研修の選定→コンテンツの設計・制作→配信プラットフォームの選定・整備→受講促進と効果測定の仕組み作り。このステップを踏むことで、オンデマンド化の効果を最大化しながら、リスクを最小化した形で研修をデジタル化できます。

大切なのは、すべてをオンデマンド化しようとするのではなく、「知識・情報のインプット」をオンデマンドに、「体験・対話・変容」をライブ形式にという使い分けです。まず一つの研修のオンデマンド化から始め、効果を検証しながら対象を広げていく段階的なアプローチが、成功への近道です。

アイデア総研について

アイデア総研の研修風景
実際の研修・ワークショップの様子

アイデア総研では、研修のオンデマンド化を含む研修全体の設計・改善支援の講演・コンサルティングを提供しています。代表の大澤は、ベイブレード(世界累計5億個)・人生銀行・夢見工房の開発者として、5,000人以上への研修・講演実績を持ちます。対面・オンライン・ハイブリッドすべての形式での研修設計と実施の知見から、貴社に最適な研修形態をご提案します。大阪公立大学・千葉大学・筑波大学・法政大学でも講義を担当。著書『おもちゃ流企画術』(実業之日本社)も好評発売中です。全国出張対応、1時間〜6時間で柔軟にご対応しますので、ぜひお気軽にご相談ください。