アイデア発想の記事

ユーザーインタビューのやり方|顧客の本音を引き出す質問術

こんにちは、アイデア総研の大澤です。

「顧客のことを理解したい」。商品開発やサービス改善に携わる方なら、誰もがそう思うはずです。しかし、アンケートや数値データだけでは、顧客の本音はなかなか見えてきません。そこで有効なのがユーザーインタビューです。直接話を聞くことで、データでは見えてこない「顧客が本当に困っていること」「本当に求めていること」を掘り起こすことができます。

ユーザーインタビューのやり方を知りたいという方は多いですが、「どんな質問をすればいいかわからない」「インタビューしても表面的な答えしか返ってこない」という悩みもよく聞きます。このページでは、ユーザーインタビューの基本から、顧客の本音を引き出す質問術、インタビュー後の分析方法まで、実践的に解説します。ぜひ最後まで読んで、明日のインタビューに役立ててみてください。すぐに実践できるポイントが満載です。

ユーザーインタビューのイメージ

ユーザーインタビューとは何か

定量調査と定性調査の違い

ユーザーインタビューは「定性調査」の代表的な手法です。「定量調査」と「定性調査」の違いを整理しておきましょう。定量調査とは、アンケートや統計データのように数値で傾向を把握する手法です。「60%のユーザーがこの機能を使っている」「平均満足度は3.8点」といったデータが得られます。一方、定性調査とは、インタビューや観察などを通じて、行動の背景にある「なぜ」や「どう感じているか」を深く理解する手法です。

ユーザーインタビューは定性調査の中でも最もよく使われる手法で、少人数(5〜10人程度)への深い聞き取りを通じて、数値には現れない顧客の思考・感情・行動を理解することを目的としています。定量調査で「何が起きているか」を把握した後、定性調査で「なぜそれが起きているか」を掘り下げるという組み合わせが、最も効果的なリサーチアプローチです。

ユーザーインタビューの最大の価値は「仮説の検証」と「未知の発見」にあります。「このユーザーはきっとこういう理由でこれを使っているはず」という仮説を確かめるだけでなく、インタビューの中でまったく予想していなかったニーズや不満が飛び出すことがあります。これこそが、定量データだけでは得られない洞察です。

ユーザーインタビューで何がわかるのか

ユーザーインタビューを通じて明らかになることは主に3つあります。まず「顧客の行動の背景にある動機」です。「なぜそれを使っているのか」「どんな状況で使うのか」「使う前にどんなことを考えているか」といった深層の動機を理解できます。アンケートでは「使っている」という事実しかわかりませんが、インタビューでは「なぜ使っているか」まで掘り下げられます。

次に「顧客自身も気づいていない潜在ニーズ」です。「あれば便利かもしれないけど、別に今のままでもいいかな」と顧客自身は思っていても、インタビューで詳しく話を聞くと、実は深刻な不満や強い欲求が見えてくることがあります。これが「潜在ニーズ」であり、新商品・新サービスの開発において最も重要な洞察です。

そして「顧客の言葉(ボイス)」も得られます。顧客がどんな言葉でそれを表現しているか、どんな言葉で不満や要望を語るかは、マーケティングや商品説明の言葉を作る上で非常に貴重な素材です。顧客の言葉をそのまま使ったコピーは、作り手の言葉で書いたコピーより何倍も響くことが多いのです。

インタビューが必要な場面と不要な場面

ユーザーインタビューは万能ではありません。適した場面と不適切な場面があります。インタビューが特に有効なのは、新商品・新サービスの開発初期段階で顧客の課題を探るとき、既存のサービスで使われていない機能の理由を探るとき、大きな方向性の意思決定の前にユーザーの価値観を理解したいときです。

一方、「どちらが好きですか?」という二択の好みを大量に調べたいときや、既に仮説が明確で検証のために統計的有意差が必要なときは、定量調査の方が適しています。インタビューは時間とコストがかかるため、「何を知りたくてインタビューをするのか」を明確にしてから実施することが重要です。

また、インタビューは通常5〜15人程度で行うことが多く、それ以上の規模の傾向把握にはアンケートが適しています。インタビューと定量調査を状況に応じて組み合わせることが、顧客理解を深める最善のアプローチです。どちらか一方だけに頼らず、目的に合わせて使い分けましょう。

ユーザーインタビューの準備

インタビューガイドの作り方

ユーザーインタビューのやり方において、準備が9割といっても過言ではありません。特に重要なのがインタビューガイド(質問リスト)の作成です。インタビューガイドは、インタビュー中に確認すべきテーマと主な質問を整理したもので、これがないとインタビューが迷走します。

インタビューガイドを作るには、まず「このインタビューで何を明らかにしたいか」という目的を1〜3個に絞ります。例えば「なぜ既存ユーザーが途中で使わなくなったのか」「どんな場面でこの商品を使いたいと思うのか」などです。次に、その目的に向けて掘り下げるための大テーマを3〜5つ設定し、各テーマに2〜3つの質問を用意します。

インタビューガイドはあくまで「ガイド」です。実際のインタビューでは、相手の答えに合わせて柔軟に質問を変えたり、予想外の方向に話が展開したりします。ガイドに縛られすぎず、相手の話の流れに乗りながら深掘りする姿勢が、良いインタビューの基本です。ガイドは「迷子にならないための地図」として使い、実際の会話は自然な流れを大切にしましょう。

インタビュー対象者の選び方

インタビュー対象者の選び方も、ユーザーインタビューの成否を左右します。大切なのは「典型的なユーザー」だけでなく、「極端なユーザー(ヘビーユーザー・全く使わないユーザー)」も含めることです。典型的なユーザーへのインタビューでは平均的な声が聞けますが、極端なユーザーからは、通常では気づかない深いインサイトが得られることがあります。

また、インタビュー対象者は「話してくれそうな人」を選ぶ誘惑がありますが、本音を引き出すには「実際にその体験をした人」を優先することが重要です。商品に不満を持っているユーザーや、競合他社のサービスを使っているユーザーへのインタビューは、耳が痛い内容もありますが、最も重要な洞察が得られます。

インタビュー対象者は少数精鋭が基本です。5〜8人の丁寧なインタビューが、30人の表面的なインタビューよりずっと価値があります。対象者のリクルーティング(発掘)には、SNSでの募集、既存顧客へのDM、インタビューパネルの活用などが使われます。謝礼(ギフト券など)を用意すると参加率が上がります。

インタビューの進め方

場の雰囲気を作るオープニングの重要性

ユーザーインタビューを始める際、最初の5〜10分が非常に重要です。ここで「この人と話しやすい」という雰囲気が作れるかどうかで、その後のインタビューの深さが変わります。最初に「正解はありません」「率直に何でも話してください」「批判的な意見こそ聞かせてください」と伝えることで、参加者が本音を話しやすい環境を作ります。

アイスブレイクとして、プロジェクトに直接関係ない日常的な話題から入るのも効果的です。「最近どんなアプリをよく使っていますか?」「休日はどんなことをして過ごしていますか?」という軽い質問から始めることで、インタビューというフォーマルな場の緊張を解くことができます。

また、インタビューの目的・時間・録音の許可確認を最初に済ませておくことで、参加者が安心して話せる環境が整います。オープニングはインタビュー全体のトーンを決める重要な時間です。焦って本題に入らず、十分に関係性を構築することが、深いインタビューへの近道です。

インタビュー中の進行テクニック

インタビュー中は、いくつかの基本的な進行テクニックを意識することで、深い洞察が得られるようになります。まず「沈黙を怖れない」こと。相手が考えている沈黙を埋めようとして次の質問を出すのは最悪のパターンです。5〜10秒の沈黙は、相手が深く考えているサインであることが多く、その後に最も重要な発言が出てくることがあります。

次に「5回の「なぜ」を使う(5 Whys)」テクニックも効果的です。「なぜそう感じるのですか?」「それはなぜですか?」と繰り返し深掘りすることで、表面の答えの奥にある本質的な動機や課題が見えてきます。ただし、詰問にならないよう「なぜ」の代わりに「どんな理由で?」「もう少し詳しく教えてもらえますか?」という言い回しを使うと、より自然な会話になります。

インタビュアーは「話す」より「聞く」ことに徹するのが基本です。インタビューで最もやってはいけないのは、インタビュアーが自分の仮説を誘導的に確認しようとすることです。「これは便利だと思いませんか?」という誘導質問は、相手の本音ではなくインタビュアーの期待に沿った答えを引き出してしまいます。質問はできるだけオープンエンド(はい・いいえで答えられない形式)にしましょう。

顧客の本音を引き出す質問術

オープンエンド質問と深掘り質問の使い方

ユーザーインタビューで本音を引き出すための最重要スキルが「質問の技術」です。オープンエンド質問とは、「はい」「いいえ」では答えられない、自由に語れる質問のことです。「この商品を最後に使ったのはいつですか?その時どんな状況でしたか?」「使い始める前と後で、何かが変わりましたか?」といった質問がオープンエンドの例です。

深掘り質問は、相手の答えをさらに掘り下げるための質問です。「もう少し詳しく教えてもらえますか?」「その時どんな気持ちでしたか?」「具体的にどんな場面でしたか?」というシンプルな問い返しが、驚くほど深い洞察につながることがあります。深掘り質問は「相手の言葉を使う」のがポイントです。相手が「面倒くさかった」と言ったら、「その面倒くさいというのは、具体的にどんな部分でしたか?」と相手の言葉を引用して掘り下げます。

「具体的なエピソードを語ってもらう」ことが、本音に到達する最短ルートです。「一般的にどう思いますか?」という質問より、「最後にこの商品を使ったときのことを具体的に話してもらえますか?」という質問の方が、はるかに豊かな洞察が得られます。抽象的な意見より、具体的な出来事・行動・感情を聞き出すことを意識しましょう。

本音を引き出すための観察とフォロー

ユーザーインタビューでは、言葉だけでなく「言葉にならないもの」も重要な情報源です。相手が言葉に詰まったとき、笑顔になったとき、目を逸らしたとき、声のトーンが変わったときなど、非言語コミュニケーションは本音の手がかりになります。「今、ちょっと言いにくそうでしたが、もし話せるなら聞かせてもらえますか?」という一言が、インタビューの核心に迫ることがあります。

また「ユーザーに実際に使ってもらいながら話を聞く」思考発話法(シンクアラウドプロトコル)も強力です。商品やウェブサイトを実際に操作してもらいながら、「今、何を考えていますか?」「今どこを見ていますか?」と逐一聞いていく手法で、通常のインタビューでは気づけない行動の詳細が明らかになります。

インタビュー後のメモと振り返りも、本音を捉える上で欠かせないプロセスです。インタビュー直後に「最も印象的だったこと」「意外だったこと」「もっと深掘りすべきだったと思うこと」を記録しておくことで、次のインタビューの精度が上がります。インタビューは1回で完璧を目指すのではなく、回を重ねるごとに深めていくものです。

ユーザーインタビューのイメージ

インタビュー後の分析と活用方法

インタビューデータの整理と共有

ユーザーインタビューを実施した後、データをどう整理して活用するかも重要なステップです。インタビューの録音・録画を文字起こしするか、メモをもとにサマリーを作成します。文字起こしはAIツールを活用すると効率的です。全文字起こしが難しい場合は、印象的な発言やキーフレーズだけでも記録しておきましょう。

複数のインタビューを実施した場合は、テーマごとに発言を分類して「共通して出てきた課題」「意外だった発言」「さらに深掘りすべき点」を整理します。付箋を使ったKJ法的な整理や、スプレッドシートでの発言収集が有効です。チームで実施した場合は、できるだけ早くメンバーで集まって気づきを共有することが重要です。記憶が新鮮なうちに話し合うことで、データの解釈が豊かになります。

インサイトを発見して次のアクションへ

インタビューデータの整理が終わったら、次は「インサイトの発見」です。インサイトとは、データから読み取れる「隠れた本質的な発見」のことです。単に「ユーザーはAが不便と言っていた」という観察にとどまらず、「なぜAが不便なのか?その背景には何があるのか?」という問いを立てて、本質的な理解に迫ることがインサイト発見の核心です。

インサイトが見つかったら、それを「どう活かすか」という次のアクションに落とし込みます。商品改善のアイデア出し、新機能の優先順位付け、マーケティングメッセージの見直しなど、具体的なアクションに繋げることで、インタビューの価値が最大化されます。インタビューは実施して終わりではなく、そこから学んでアクションを起こすことで初めて価値が生まれるのです。「インタビューしたけど活用できていない」という状態を防ぐために、インタビュー実施前に「この結果をどう使うか」を明確にしておくことも大切です。

ベイブレード開発に活きたユーザー観察

「子どもが本当に欲しいもの」を見つけるプロセス

おもちゃ開発の現場では、ユーザーインタビューや観察がアイデアの出発点になることが多くあります。ベイブレードが生まれた背景にも、子どもたちへの観察と仮説検証がありました。「すげゴマ」「バトルトップ」という先行商品が売れなかった理由を探る中で、子どもたちの行動を注意深く観察しました。

その中で見えてきたのが「1種類しかないから、2個目を買う理由がない」という根本的な課題でした。バトルトップは楽しいけれど、1個あれば十分。友達が持っていても、自分もひとつ買えば事足りる。リピート購買が生まれない構造的な問題でした。この洞察は、単に「売上データ」を見るだけでは気づけなかったものです。子どもたちの実際の遊び方を観察し、なぜ繰り返し買わないのかを深く考えることで見えてきました。

失敗を分析してわかった「本当のニーズ」

バトルトップの失敗を徹底分析して立てた仮説は「バトルできることに加えて、何度でも買いたくなる仕組みが必要」というものでした。子どもたちが「改造したい」「もっと強くしたい」「友達と違うカスタマイズをしたい」というニーズを持っていると仮説を立て、「バトルできる×改造できる」という2要素を組み合わせたのがベイブレードです。

これはまさに「顧客観察→課題発見→仮説→検証」というユーザーインタビューの基本プロセスと同じです。すげゴマで失敗し、バトルトップで失敗し、その失敗から子どもたちの本音を読み取り、仮説を立てて試す繰り返しが、世界累計5億個の大ヒット商品を生んだのです。ユーザーの本音を聞き続けることが、ヒット商品開発の核心だと実感しています。

ユーザーインタビューのイメージ

まとめ

いかがでしたか。今回はユーザーインタビューのやり方について、準備から本番、分析まで実践的に解説しました。

ユーザーインタビューで大切なポイントは3つです。まず「何を明らかにしたいか」という目的を明確にすること。次に「オープンエンド質問」と「深掘り質問」を使いこなして、表面の答えの奥にある本音を引き出すこと。そして「具体的なエピソードを語ってもらう」ことで、抽象的な意見ではなくリアルな体験を聞き出すことです。

ユーザーインタビューは何度やっても難しいものです。しかし、顧客の言葉から本当に大切なことを学ぶ体験を重ねることで、商品やサービスの本質的な価値を見つける力が育ちます。ぜひ最初の一歩を踏み出してみてください。

アイデア総研について

アイデア総研の研修風景
実際の研修・ワークショップの様子

アイデア総研では、ユーザーインタビューの実践スキルを含む、アイデア発想・企画力向上の研修・講演を全国で実施しています。代表の大澤は、ベイブレード(世界累計5億個)・人生銀行・夢見工房の開発者として、顧客の本音を探り続けてきた現場経験をもとに、5,000人以上への講義を行ってきました。大阪公立大学・千葉大学・筑波大学・法政大学でも登壇。著書に『おもちゃ流企画術』(実業之日本社)があります。対面・オンライン・ハイブリッドに対応し、1時間〜6時間まで柔軟に対応します。ユーザーインタビューや顧客理解に関する研修はお気軽にご相談ください。

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