アイデア発想の記事

最悪のアイデアから最高のアイデアを生む”アイデア錬金術”

こんにちは、アイデア総研の大澤です。

あなたはプロジェクトのなかで“最高のアイデア”を求められたとき、どのような方法でアイデアを発想しますでしょうか。“最高のアイデア”を生み出すことは、決して簡単ではありません。なぜなら、ストレートに最高のアイデアを考えると、たいていの場合は無難で当たり前のアイデアに落ち着きがちだからです。

ではどうやって“当たり前のアイデアの壁”を乗り越えて、ユニークで奇抜な“最高のアイデア”に到達できるのでしょうか。アイデア総研では、“急がば回れ”ということわざもあるように、最高のアイデアを出すためにいったん遠回りをして“最悪のアイデア”を発想することをご提案いたします。

では早速、最悪のアイデアから最高のアイデアを生み出す“アイデア錬金術”について詳しくご説明します。

“最高のアイデア”の難しさ

最高の車のイメージあなたは“最高の車”というテーマでアイデアを求められた場合、どのようなイメージを浮かべますでしょうか。おそらく多くの方は、”すごく早い””すごく内装が豪華””すごくかっこいい”など、実際に存在する高級車であるフェラーリやロールスロイスなどの高級車の特徴を連想するのではないでしょうか。

同様に“最高の料理”という言葉からは、フランス料理のフルコースや満漢全席、ミシュラン三つ星レストランのメニューなどをイメージしてしまいがちです。このように、一般に“最高のもの”をイメージした場合、多くの人が似たような既存の最高のものを想像してしまいます。このことが“当たり前のアイデアの壁”として立ちはだかります。

ですので、直線的に“最高のアイデア”を考えてしまうと、どうしても画一的で常識的なイメージにかたよってしまうのです。このような状況を回避するためには、いったん最高のアイデアを追うのをやめ、“急がば回れ”の精神で別の方向からのアプローチを行うことが有効なのです。

“マクドナルド理論”からのヒント

マクドナルド理論『マクドナルド理論』で停滞したプロジェクトを前進させようで詳しく触れているように、最悪のアイデアから発想を行うメソッドとして『マクドナルド理論』というものが存在します。

この理論は、グループの中でランチの行き先が決まらないときに、誰かが「マクドナルドに行こう」と提案すると”それよりもましな”アイデアが次々に出てくる、という心理トリックをアイデア発想に応用したやり方です。何らかのプロジェクトが膠着状態におちいったときに、“実行可能な中で最悪のアイデア”を出すことで創造力のトリガーが引かれ、次々にアイデアが出てくるようになります。

この『マクドナルド理論』“最悪のアイデアを出す”というコンセプトを最高のアイデアを出すためのトリガーとして使用するのが“アイデア錬金術”の骨子です。

“悪いバージョン(the bad version)”のテクニック

ディルバートのDVDボックス類似した手法として、スコット・アダムス氏の提案する“悪いバージョン(the bad version)”を用いた発想法をご紹介します。スコット・アダムス氏はアメリカの有名な漫画『ディルバート』の作者として知られています。

彼がウォールストリートジャーナル紙に寄稿したエッセイ『Why you should come up with at least 1 bad idea today』の中で、最高のアイデアの発想法について触れています。その一部を引用させていただきます。

私はテレビ業界でしばらくのあいだ働いたときに、放送作家たちが使っているあるテクニックを学びました。それは“悪いバージョン(the bad version)”と呼ばれるテクニックです。プロットを作成し終わったときに”まだ良いアイデアがあるのではないか”と感じた場合、”より良いアイデア”を他の作家から得る必要があります。そのために、他の作家を刺激するためだけに“悪いバージョン”のプロットを作成するのです。

たとえば”主人公がある島に不時着する”というストーリーの場合”悪いバージョン”では猿があらわれてヤシの葉とココナッツで精巧なヘリコプターを作り脱出します。このアイデアは明らかに悪いものではありますが、このアイデアをきっかけとしてヘリコプター以外の乗り物が登場するアイデアや、猿が登場するストーリーなどを思いつくかもしれません。最高のアイデアを発想するための最初のステップは、ひとつのアイデアに固執しないということです。“悪いバージョン”はあなたの視点をより見晴らしの良い場所へと運んでくれるのです。

ここで“悪いバージョン”と呼ばれているものは“最悪のアイデア”と同じコンセプトのものです。放送作家のプロットを例にとっていますが、このやりかたはあらゆる場合で応用が可能です。

最悪の家族旅行を考える

スタンフォード白熱教室

画像出展:NHK.jp

2011年に放映されたNHKの『スタンフォード白熱教室』の第3回目に『最悪の家族旅行を考える』という内容が放映されました。このシリーズは、スタンフォード大学のカリスマ講師であるティナ・シーリグ氏による起業家育成講義を丸ごと収録したものです。

第3回のテーマは“常識を打ち破る方法”です。設定された検討テーマは“最高の家族旅行”。そのための手段として、“最悪の家族旅行”を考え、そのアイデアを改良して“最高の家族旅行”のアイデアに仕立て直すというプロセスがとられました。これによって、ストレートに最高のアイデアを考えるのでは得ることができない、常識や思い込みをこえた創造的・革新的なアイデアを得ることができる、ということが実際に示されました。

常識の枠を飛び越えた奇抜でばかげたアイデアは、他に類を見ない独創的な“最高のアイデア”になる可能性があります。最悪のアイデアを最高のアイデアに生まれ変わらせるというプロセスは、まさにアイデアの錬金術とよべるでしょう。

“アイデア錬金術”のやり方

これらの例でしめされた手法を、一般的に使えるアイデア発想法にアレンジしたものが“アイデア錬金術”です。“当たり前のアイデアの壁”を超えたいときには、ぜひ活用してみてください。アイデア錬金術の基本的な進め方はブレインストーミング(ブレスト)に準じます。普段行っているブレストの発展版としてとらえていただければ結構です。ブレストの基本的な進め方については『本当に使えるアイデアを出すためのブレインストーミングのやり方』を参考にしてください。

アイデア錬金術の準備

まずは検討すべきテーマを設定しましょう。テーマは“最高の○○”という形で設定するとわかりやすいですが、必ずしもこれにこだわる必要はありません。アイデア錬金術は新しい商品でもサービスでもネーミングでも、あらゆるテーマで行うことが可能です。人数については一人で行うことも可能ですが、アイデアの連想が大きな効果を発揮しますので、グループで行ったほうがより高い効果を得ることができます。グループで行う場合、人数は4から6名程度がベストです。

ステップ1:”最悪のアイデア”を出す

ブレストと同様にホワイトボードもしくは模造紙とマーカーを準備したら、アイデア出しを開始します。アイデア出しのテーマは“最悪の○○”とします。バスツアーのアイデアならば“最悪のバスツアー”、髭剃りのネーミングのアイデアならば“最悪の髭剃りの商品名”というように、冒頭に“最悪の”をつけてアイデア出しを行いましょう。

“最悪のアイデア”出しの所要時間は30分~1時間程度として、アイデアの出るペースが落ち着いてきたらいったん切り上げるようにしましょう。

ステップ2:アイデアの転換

“最悪のアイデア”が一通り出おわったら小休止をとりましょう。いよいよここからが本番です。“最悪のアイデア”から連想を行い、“最高のアイデア”に作りかえます。ブレストの要領で、みんなでアイデア出しを行いましょう。最悪のアイデアを正反対にしてみても良いですし、アイデアに関連する単語から連想を行ってもかまいません。ただし、必ず何かしらの要素から連想を行うという縛りを設けます。

例として、“最悪の車”のアイデアからの転換を行ったとします。

「飢えた野良犬が常に後をついてくる車」
“生き物がついてくる”という要素から連想して、かわいい小鳥が寄ってくる車、カブトムシやクワガタが集まる車、もう少し連想して虫除け機能のあるオープンカーなど…

「5キロ走るごとに部品がひとつずつはずれていく車」
“何かが変わる”という要素から連想して、スピードをあげるとフォーミュラーカーに自動的に変形する車、乗員が増えれば増えるほど長くなるリムジンなど…

できるだけ、すべての“最悪のアイデア”に対して作りかえの作業を行うようにしましょう。時間的には、ステップ1とほぼ同じ長さの時間をとるとよいでしょう。最後に“最高のアイデア”のレビューを行い、良いものをピックアップしていきましょう。

アイデア錬金術のポイント

アイデア錬金術の目的は常識から逸脱した奇抜なアイデアを出すという部分にありますので、最悪のアイデアを出す段階でいかに思い切ったアイデアが出せるかが重要になります。ヒントはテレビのバラエティ番組などの大喜利でよくあるテーマ“こんな○○はいやだ!”です。最悪のバスツアーのアイデアであれば“こんなバスツアーはいやだ!”というテーマで大喜利に参加しているつもりになってアイデアを考えましょう。

また他人のアイデアに乗っかるということが重要なテクニックになりますので、誰かがアイデアを発表する際には必ず全員で聞くようにしてください。楽しい雰囲気でリラックスしてアイデアを出すことで、創造性が刺激され“当たり前のアイデアの壁”を打ち破るアイデアを出すことができるようになります。

また、アイデア錬金術の要素をいつものブレストに取り入れ、アイデアが膠着した状況になったら”最悪のアイデアを考えてみましょう”と議論の活性剤としてスポット的に取り入れることも可能です。アイデア錬金術を駆使して、輝ける“黄金のアイデア”を手に入れましょう!

まとめ

いかがでしたか。最悪のアイデアから最高のアイデアを生み出す”アイデア錬金術”についてご紹介しました。

通常のブレストを行うと、”良いアイデアを出そう”と必要以上に身構えてしまい、積極的に意見が出にくくなってしまったり、常識的な理想論に集約されてしまうことがあります。そのような状況を回避する方法として、“あえて悪いアイデアを出す”という手法は非常に有効です。

“良い案でなくて良い”というルールを設けることで、心理的な障壁を取り除き、オープンマインドなアイデア出しを行うことが可能になるのです。また、一度でもアイデア錬金術を行ってみることで、自分自身が知らず知らずのうちに枠にはまった考えに縛られていたことに気づくことができます。あなたが社内研修やセミナー等を開催する機会がありましたら、ぜひ取り入れてみてください。

source:danpink.com, NHK.jp