こんにちは、アイデア総研の大澤です。
突然ですが、あなたは職場でこんな経験をしたことはありませんか?
「新しい企画を考えよう!」とミーティングが始まったのに、気づけば開始5分で「それって予算的に無理じゃない?」「前もそれやって失敗したよね」という話になり、気持ちが萎えてしまった……という経験。
はい、あるあるですよね。サラリーマンなら誰でも一度は経験するあの空気感です。
アイデアが生まれる前から「現実」という壁が立ちはだかる。これがビジネスの現場でイノベーションが生まれにくい最大の理由のひとつだと私は考えています。
そこで今回ご紹介したいのが、世界最高峰のエンタテインメント企業・ディズニーが実践するアイデア発想法、「ブルースカイ・プロセス(Blue Sky Process)」です。
業界や職種を問わず、すべての企画担当者・プランナー・クリエイターにとって即使える考え方ですので、ぜひ最後までお読みください。
DISNY IMAGICADEMY “An Introduction to the Blue Sky Process”
ブルースカイ・プロセスとは?

ブルースカイ・プロセスとは、ディズニーのイマジニアたち(ディズニーのクリエイター集団)が実践してきたアイデア発想の手法です。
「ブルースカイ(青い空)」という名前には深い意味があります。青い空は限りなく広がり、どこまでも続いています。雲もなく、壁もなく、制限もない。そんな「無限の可能性」を象徴しているのがこの言葉です。
子どもはこのブルースカイ的な思考を生まれつき持っています。「空を飛びたい」「海の底に家を建てたい」「恐竜と友達になりたい」——大人から見れば荒唐無稽に見えることを、子どもは平気で考えます。そしてその自由な発想力こそが、ディズニーのブルースカイ・プロセスの根本にある考え方なのです。
ディズニーのイマジニアたちは、新しいアトラクションや体験を企画する際、まず「できるかどうか」を一切考えません。コストも、技術的な制約も、スケジュールも、とりあえず全部横に置いて、「もし何でもできるとしたら、どんなものを作りたいか?」という問いからスタートします。
これがブルースカイ・プロセスの本質です。
Think BIG! ── 「できるかどうか」より「したらどうなるか」
ブルースカイ・プロセスで最初に求められるのは、「Think BIG!」という姿勢です。
私たちプランナーやビジネスパーソンは、アイデアを考えるとき、無意識のうちに「箱の外側」を気にしてしまいます。
「箱の外側」とは何か?それは、予算・スケジュール・社内承認・前例・技術的な実現可能性……いわゆる「現実的な制約」のことです。
もちろん最終的にはこれらを考慮しなければなりませんが、アイデアが生まれる前にそれらを気にすることは、芽が出る前に種を踏みつぶすようなものです。
ブルースカイ・プロセスでは、まず「可能かどうか」という言葉を頭の中から消去します。そのかわりに使う言葉が「したらどうなるか(What if ~?)」です。
- 「What if ゲストが水の上を歩けたら?」
- 「What if アトラクションに乗っているゲストが映画の主人公になれたら?」
- 「What if 食事をしながら空を飛んでいる気分になれたら?」
こうした「What if」の問いが、ディズニーの数々の伝説的なアトラクションを生み出してきました。
サラリーマンの日常に置き換えると、「What if 我々の製品が世界シェアNo.1になったら、どんなことができる?」「What if 予算が10倍あったら、どんなキャンペーンを打つ?」という思考がそれにあたります。
夢想のように聞こえますが、これが革新的なアイデアを生み出す最初のステップなのです。
すべてのアイデアの出発点 ── ディズニーが証明する創造力のサイクル
ディズニーのテーマパークにあるすべてのもの——ジェットコースター、キャラクターの衣装、レストランのメニュー、案内サインのデザインに至るまで——は、すべてアイデアから生まれています。
どんな小さな体験も、最初は誰かの「こうしたら面白いんじゃないか?」というひらめきから始まっているのです。
ディズニーでは、このアイデアの連鎖が「創造力のサイクル」として機能しています。ブルースカイ・プロセスで生まれたアイデアが実現され、それがまた新しいブルースカイ・プロセスへのインプットになる。終わりのないイノベーションのループです。
ウォルト・ディズニーはこんな言葉を残しています。
「ディズニーランドが完成することはありません。世の中に想像力がある限り、進化し続けるでしょう」
この言葉はブルースカイ・プロセスの哲学そのものです。ゴールを設けず、常に「もっと良くなれるはず」という発想を持ち続ける。これが世界最高峰のエンタテインメント企業を支える精神なのです。
あなたの会社でも、この「創造力のサイクル」を回すことができます。一つのアイデアが成功すれば、それを足がかりにさらに大きなアイデアが生まれる。最初の一歩を踏み出すことが何より重要なのです。
ブルースカイ・プロセスの進め方 ── 実践的な4ステップ
では、実際にブルースカイ・プロセスをどう進めるのか、具体的な手順をご紹介します。
ステップ1:事前リサーチと体験の共有
ブレインストーミングを始める前に、チームメンバーがそれぞれ行ったリサーチや個人的な体験を共有します。数字やデータだけでなく、「そのとき自分はどう感じたか」という感情レベルの情報を共有することが重要です。
たとえば、「競合他社のサービスを使ってみたら、手続きがめんどくさくてストレスを感じた」という体験は、「競合より手続きをシンプルにする」というアイデアの種になります。
ステップ2:物語の断片・アイデアの断片を出す
リサーチや体験の共有が終わったら、いよいよブレインストーミング本番です。2〜3時間、チームで集まり、「トピック」を探索します。
ここで重要なのは、完成されたアイデアを出そうとしないことです。「物語の断片」「アイデアの断片」でいい。「なんか、こういう感じのやつ」「こういう気持ちになれるやつ」という荒削りなものをどんどん出していきましょう。
ブルースカイ・プロセスでは、この段階でアイデアの良し悪しを判断しません。批判もしません。ただひたすら出す。それがルールです。
ステップ3:脳を休める
十分にアイデアを出し切ったら、一旦セッションを終了します。脳は筋肉と同じで、激しいトレーニングの後は休息が必要です。
実際、最高のアイデアはブレインストーミング中よりも、セッション後の休憩中や、翌朝のシャワーを浴びているときに浮かぶことが多いものです。これは脳科学的にも証明されており、「デフォルトモードネットワーク」と呼ばれる安静時の脳活動が、アイデアの統合や整理を行っているためです。
ステップ4:アイデアを絞り込み、磨く
休息の後、出たアイデアの中から「面白いかも」と感じるものを選び、チームで深掘りしていきます。このフェーズで初めて「実現可能性」や「コスト」の話をしてもOKです。ただし、あくまでアイデアを「殺す」ためではなく「育てる」ために議論するのが大原則です。
アイデア発想は”釣り”のようなもの ── 焦らず、諦めず
ブルースカイ・プロセスを実践していると、「なかなかいいアイデアが出ない……」と焦ることがあるかもしれません。そんなときに思い出してほしいのが、ディズニーのイマジニアたちが語る「釣り」の比喩です。
池の前で一日中釣竿を垂らしていても、一匹も釣れない日があります。しかし、釣り糸を入れた瞬間に大物がかかることもある。どちらになるかは誰にもわかりません。
アイデア発想もまったく同じです。
一時間考えて何も出なくても、焦る必要はありません。むしろ、そのプロセス自体が次のアイデアのための「仕込み」になっています。脳はあなたが意識していないうちにも、ずっとアイデアを探し続けているからです。
ビジネスの世界では「成果を急ぐ」文化が強く、すぐに結果を求めがちです。しかし、本当に革新的なアイデアは往々にして時間がかかります。ディズニーのテーマパークにあるアトラクションも、企画から完成まで数年かかるものがほとんどです。
大切なのは、諦めないこと。ワクワクし続けること。そして、釣り糸を水に入れ続けること(=アイデアを出し続けること)です。
サラリーマンがブルースカイ・プロセスを活かす3つのシーン
ここで、ブルースカイ・プロセスを日常のビジネスシーンでどう活かすか、具体的な例を3つご紹介します。
① 新製品・新サービスの企画会議
まず「What if ~?」で10〜20のアイデアを出してから、実現可能性の議論に移る。最初から「それは無理」を言わないルールをチームで共有しておくと効果的です。
② 問題解決ミーティング
「この問題がなかったとしたら、どうなっている?」という逆転の発想でブルースカイ・セッションを行う。現状の制約から離れることで、根本的な解決策が見えてくることがあります。
③ 個人のキャリア設計
「もし何でもできるとしたら、どんな仕事をしたいか?」という問いから始めるキャリアプランニング。現実的な制約は後から考えれば良く、まずは自分の「理想の姿」を描くことが出発点になります。
まとめ
いかがでしたか。ディズニーのブルースカイ・プロセスについてご紹介してきました。
私たちプランナーやサラリーマンは、アイデアを出すとき、ついついコストや実現性という「箱の外側」を先に考えてしまいがちです。それは決して悪いことではありませんが、そのせいで無限の創造性を自分で狭めてしまっているとしたら、これはとてももったいないことです。
ブルースカイ・プロセスのエッセンスは、たったひとつの問いです。
「もし何でもできるとしたら、どうしたい?」
この問いを持つだけで、あなたのアイデアの質は変わります。まずはThink BIG!からスタートし、現実的な精査はその後で。ディズニーが証明してきたこの順序を、ぜひあなたの職場でも試してみてください。
釣りと同じで、最初は何も釣れないかもしれません。でも、釣り糸を水に入れ続ける人だけが、やがて大物を釣り上げることができます。あなたのブルースカイ・プロセスが、素晴らしいアイデアを生み出すきっかけになれば幸いです。
source: disneyimagicademy.com
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