こんにちは、アイデア総研の大澤です。
会社などの組織で物事を決める場面で、合意形成のために多数決を活用することはよくありますよね。
株主総会や取締役会はもちろん、日々の会議でもちょっとした意思決定に多数決は大活躍しています。
最近の大きな例でいえば、2016年6月23日に行われたイギリスのEU離脱を決めた国民投票も、まさに大規模な多数決でした。記憶にある方も多いのではないでしょうか。
思えば小学校の学級会のころから、多数決は民主的で公平な決め方として親しまれてきました。
では、たくさんのアイデアの中から案を絞り込む場面でも、多数決は有効な手段といえるのでしょうか。
今回は、アイデアの収束技法としての多数決のメリットとデメリットについて、一緒に考えていきたいと思います。
多数決のメリットって?
まずは、アイデアの絞り込みにおける多数決のメリットから見ていきましょう。
アイデアというのは発散と収束のステップを繰り返すことで、少しずつ磨かれていくものです。
代表的な発散技法であるブレインストーミング(ブレスト)などでたくさんのアイデアが出たあとは、収束のステップでしっかり絞り込みを行う必要があります。
収束技法として最もよく知られているのがKJ法です。
KJ法はきちんと運用すれば非常に強力なメソッドなのですが、
- 1セット終わるまでにかなり時間がかかる
- 正しいやり方を熟知していないと良い結果が出にくい
といった課題があり、忙しいビジネスシーンではなかなか使いにくいこともあります。
アイデアの絞り込みに十分な時間が取れない場合や、KJ法に慣れたメンバーがいない場合によく使われるのが、多数決による合意形成です。
アイデア決裁における多数決のメリットには、次のようなものが挙げられます。
公平感・納得感を得られる
多数決の最大のメリットは、参加者全員が同じ立場で意思決定に関われるという公平性です。
自分の一票がちゃんと反映されているという実感があるため、最終結果に対して不満が出にくく、その後のプロジェクト進行がスムーズになりやすいというメリットもあります。
選挙でも、貧富や社会的立場に関わらず全員が平等に一票を持つことで、結果に対してある程度の納得感が生まれるのと同じ原理ですね。
結果の安定性が確保できる
もし絶対に間違いを犯さない”完璧な”決裁者が存在すれば、その人にすべての判断をお任せするのがベストでしょう。
しかし、どんなカリスマ経営者であっても判断を誤ることはあります。
一人が独断で決めるよりも、多くの人が真剣に検討した結果を集約できる多数決は、大きな判断ミスが起こりにくいというメリットがあります。
大失敗を未然に防ぐことで、より成功確率の高いアイデアを安定して選べる点も多数決の強みといえるでしょう。
結果が出るまでのスピード感
ビジネスの場では、さまざまな課題をスピーディーに解決していくことが求められます。スピード感は大きな武器です。
全会一致で物事を決めようとしたら、いったいどれだけの時間がかかるか想像もできません。
最終結果がどうであれ、あっという間に結論を出せる多数決は、ビジネスシーンにぴったりのスピーディーな決議法といえるでしょう。
消費者に受け入れられる可能性が高い
アイデアを最終的に商品やサービスとして消費者に届けることを考えると、できるだけ多くの人の心をつかむ必要があります。
より多くの投票者に支持されたアイデアは、より多くの消費者にも受け入れられる可能性が高いといえるでしょう。
多数決のデメリットって?
では今度は、アイデアの絞り込みにおける多数決のデメリットを見ていきましょう。
一見するとメリットが多そうな多数決ですが、実はデメリットも少なくありません。
順番に確認していきましょう。
革新的なアイデアが選ばれにくい
イノベーションは多数決からは生まれないという考え方があります。
実際、「多数決で選ばれたアイデアはあえて採用しない」という経営者もいるほどです。
革新的なアイデアというのは、一部の人からは熱狂的な支持を受ける一方、多くの人からは「よくわからない」「怖い」と反対されがちです。
その結果、多数決では無難なアイデアばかりが選ばれ、ダイヤの原石が埋もれてしまうケースが多く見られます。
責任の所在が不明確になる
多数決は大勢の意見を反映できる反面、「最終的に誰がこの案を決めたのか」という責任の所在が曖昧になりやすいという問題があります。
アイデアを実行に移すには誰かが強力に推進していく必要があり、責任者が不明確なプロジェクトは方向性を見失いがちです。
また、プロジェクトが失敗したときに「誰も責任を取らない」という残念な状況にもなりかねません。
参加者の立場や知識に差がある
多数決がうまく機能するには、参加者全員が同じレベルの知識や判断力を持っていることが理想です。しかし、現実はそうでないケースがほとんどです。
実際にプロジェクトを動かす責任者と、直接関与しないメンバーが同じ一票を持つのは本当に公平といえるでしょうか。専門知識に大きな差がある場合はなおさらです。
選択肢が多い場合の弊害
選択肢が3つ以上ある多数決では、最多得票のアイデアが過半数を割ることがあります。
その場合、採択された案の賛成者よりも反対者のほうが多いという逆転現象が生じてしまいます。
さらに、採決の順番によっても結果が変わることがあるため、多数決が必ずしも公平とはいえない場面もあるのです。
おすすめの多数決のやりかた
メリットとデメリットの両面がある多数決ですが、やり方を少し工夫するだけでデメリットを大幅に減らすことができます。
ここでは、多数決を使ったアイデア絞り込みのおすすめの進め方を一例としてご紹介します。
まず多数決で大まかに絞る
最初のステップは、多数決でアイデアをざっくりと絞り込むことです。
アイデアをホワイトボードや模造紙に書き出した場合は、挙手で多数決を行います。
アイデアを順番に読み上げ、良いと思ったものに挙手してもらい、得票数を数えます。
得票数は「正」の字でアイデアの横にわかりやすく記入しておきましょう。
アイデアを紙に書き出した場合は、机の上に並べて各自が良いと思うものに☆マークをペンで書き込んでいくスタイルもおすすめです。
どちらの方法でも、良いと思ったアイデアに好きなだけ投票できるようにしましょう。
投票が終わったら得票数を集計し、上位10%を目安にアイデアを絞り込みます。
アイデアが50案あれば5案、100案あれば10案程度を選び、発案者に1分程度のピッチ(口頭での簡単なプレゼン)をしてもらいましょう。
ワイルドなアイデアを生き残らせる
ピッチのステップにもう一つ工夫を加えます。
得票数が少なくても、参加者が「どうしてもこれを残したい!」と思うアイデアがあれば、自由に挙手してもらいピッチに追加します。
挙手はあくまで自主的に行い、自薦・他薦どちらでもOKです。
このひと手間によって、一部のメンバーから強烈な支持を受けるダイヤの原石を見落とすリスクを防ぐことができます。
全員のピッチが終わり、内容を確認し合えたら次のステップへ進みます。
最後はコンセンサスで決める
ピッチが終わったら、残った案に対して議論を深めていきます。
ここからは投票ではなく、じっくり話し合って大方の同意を形成する「コンセンサス方式」を取り入れます。
コンセンサス方式は国連安全保障理事会の決議でも採用されている方法で、少数派の意見も尊重できる点が大きな特徴です。
議論の前に、最重視する評価軸をあらかじめ決めておくことが重要です。
「革新性」を最優先にするのか「実現性」を優先するのかを明確にしてから話し合いを進めるようにしましょう。
このようにアイデアをある程度絞ったうえで十分に議論し、全員が納得できる形で決める方法が、現場では最も効果的です。
まとめ
いかがでしたか。組織における”決め方”は非常に奥が深く、専門家の間でも意見が分かれるほどです。
そのなかで多数決は、シンプルでわかりやすく、スピーディーに使える便利な合意形成の方法であることは間違いありません。
一方で、革新的なアイデアが埋もれてしまうリスクや、責任の所在が曖昧になる問題点も忘れてはいけません。
多数決のメリットとデメリットをしっかり理解したうえで、「ざっくり絞る→ワイルドなアイデアを救う→コンセンサスで決める」という流れを活用すれば、より質の高いアイデア選定が実現できます。
ぜひ次の会議から取り入れてみてください。あなたのチームのアイデア決裁が、一段とスムーズになるはずです。
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