こんにちは、アイデア総研の大澤です。
企画に携わるお仕事をされているあなたなら、ブレインストーミング(以下ブレスト)は日常の一部になっているのではないでしょうか。
むしろ、「気づいたら業務時間の大半がブレストで消えていた……」なんてことも、少なくないかもしれませんね。
でも、正直に振り返ってみてください。
先週やったあのブレスト、先月盛り上がったあの会議、そこで出てきたアイデアはその後ちゃんと企画書になりましたか?
……おそらく「なっていない」という方が大半ではないでしょうか。
この記事では、そんな「やったけど何も残らないブレスト」がなぜ生まれるのかを明らかにしつつ、本当に使えるアイデアを引き出すブレストのやり方を実践的にご紹介します。
企画書に直結するブレストのコツを知りたい方は、ぜひ最後までお付き合いください。
そもそもブレストって何?
ブレストとは何か
「ブレスト=みんなでわいわいアイデアを出すミーティング」と思っている方も多いと思いますが、実はきちんとした進め方のルールが存在します。
Wikipediaによると、ブレインストーミングとは、
集団でアイデアを出し合うことによって相互交錯の連鎖反応や発想の誘発を期待する技法である。
と定義されています。
つまりブレストとは、「とりあえずみんなで集まってアイデアを叫ぶ場」ではなく、メンバー同士のアイデアを化学反応(ケミストリー)させることを狙った、れっきとした企画発想テクニックなのです。
なぜダメなブレストが起きるのか?
ブレストを重ねていると、いつしか「ブレストをすること自体」が目的になっていると感じることはありませんか?
気の合う仕事仲間とざっくばらんにアイデアを出し合うのは、企画する人間にとってとても楽しい時間です。しかも出したアイデアに責任は伴いませんから、気が楽というのも正直なところでしょう。
そう、ブレストは楽しいのです。
社内にも「何か課題があれば即ブレスト!」というタイプの上司がいたりしますよね。ブレストをやった達成感だけが残って、肝心の課題は翌週もそのまま……という光景、思い当たる方も多いはずです。
手段がいつの間にか目的になってしまっている、これこそが典型的な「ダメなブレスト」です。
ダメなブレストをなくすには?
ブレストはあくまで企画書を作るためのアイデアを集める会議です。
企画書の素材にならないアイデアをいくら積み上げても、残念ながらそれは時間の無駄でしかありません。
ダメなブレストを防ぐいちばんの方法は、ブレストの前に「誰が企画書を作るか」を決めておくことです。
「○○さん、今日の内容ちょっとまとめといて!」とブレスト後に丸投げされた経験のある方もいるかと思いますが、これは非常に非効率です。
理想は、最終的に企画書を作る人がブレストの主催者兼ファシリテーターを務めること。そうすることで、必要なアイデアを自分の手で集められます。
※自分で十分な企画案を持っているなら、あえてみんなの時間を使ってブレストを開く必要はありません。
以下では、あなた自身が企画書を作ってプレゼンする立場にあり、そのために使えるアイデアを集めたくてブレストを開催したい、というケースを想定して解説していきます。
正しいブレストのやりかた(準備編)
目的を考える
ブレストを開催する前に、このブレストでどんなアイデアがほしいのかをあらかじめイメージしておくことが大切です。
企画書のテーマ(課題)はこの段階ですでに明らかになっているはずなので、次に考えるべきはブレストの着地点(落としどころ)です。
企画の方向性を探るための幅広い知見がほしいのか、すぐ企画書に落とし込める具体的なアイデアがほしいのかによって、ブレストの形式や呼ぶメンバーが大きく変わってきます。
プレゼンの日程が決まっているなら、日程を逆算して企画書の作成時間やデータ収集のリードタイムを確認し、ブレストの段階でどこまで具体的なアイデアが必要かを明確にしておきましょう。
そのイメージが固まったら、具体的なコーディネートに入ります。
ブレストのコーディネート
ブレストの目的が整理できたら、主催者として開催内容を組み立てていきましょう。
主な検討事項は以下のとおりです。
- 誰を呼ぶか(何人呼ぶか)?
- スケジュールをどうするか?
- 場所をどうするか?
このなかで特に重要なのが誰を呼ぶかという点です。メンバーの顔ぶれで、ブレストの成否はほぼ決まると言っても過言ではありません。
本当に使えるアイデアを得たいなら、必要と思える人材を集めるために可能な限り手を尽くしましょう。
ブレストに誰を呼ぶべきか?
ブレストというと、いつも同じメンバー・同じ部署で集まりがちではないでしょうか。
毎回同じメンバーだと情報共有が楽になるメリットはある反面、予想外のアイデアが出にくくなるという大きなデメリットがあります。
ブレストの最大の強みはメンバー同士の異なるアイデアによるケミストリーですから、これではせっかくの効果が半減してしまいます。
また、部署の上役がいると場が萎縮したり、主導権を持っていかれたりすることも多いもの。慣習的に上役が参加している状況なら、一度見直しを検討してみてください。
上役の立場からすれば、ブレストに参加したかどうかより良い企画案が出てくるかどうかのほうがよっぽど重要なはずです。
思い切って、あなた自身が本当に必要だと思うメンバーを自分で選んで集めてしまいましょう。部署の垣根は気にせず、テーマに必要なスキルを持つ人をリストアップしてください。
他部署のメンバーを呼ぶ際は、次回は相手のブレストに協力するなど、お互いにメリットのある関係を作っておくと声がかけやすくなります。
ブレストに必要なメンバー
参加人数は、私の経験上4〜6人程度がベストです。
多すぎると発言しない人が出てきますし、少なすぎると場が煮詰まりやすくなります。
また、参加者のキャラクターの多様性もブレストの活性化に直結します。以下のようなメンバーを意識してアサインしてみてください。
●異性のメンバー
男性中心の場なら女性を、女性中心の場なら男性を1名以上入れましょう。適度な緊張感が生まれ、思いがけない視点のアイデアが期待できます。
●若手メンバー
業界の常識にとらわれない新鮮な発想を持っているのが若手の強みです。緊張して発言しにくいこともありますので、ファシリテーターとして発言しやすい雰囲気づくりを心がけましょう。
●ベテランのメンバー
豊富な経験を持つベテランはブレストに欠かせない存在です。ただし経験豊富なぶん、他の意見を否定しがちな面もありますので、ブレストの4大ルール(後述)をしっかり共有しておきましょう。
●他部門のメンバー
マーケティング部門なら営業やスタッフ部門からの参加が非常に有効です。参加依頼の際は、相手の上長への根回しを忘れずに。
●盛り上げ役
場を和ませ、自由に発言しやすい雰囲気を作るムードメーカーは貴重な存在です。話が脱線しがちなので、ファシリテーターが焦点を保つよう意識しましょう。
●オタク
特定の分野に突出した知見を持つ”オタク”は、意外にもブレストにおけるキーパーソンです。得意分野がブレストのテーマと無関係でも全く問題ありません。なるべく”濃いオタク”を探してみましょう。
メンバー選びの軸はブレストの落としどころです。幅広い知見を集めたいなら若手やオタクを中心に、すぐ使える具体案がほしいなら優秀なベテランの存在がカギになります。
可能な限り多様性のあるメンバーを集めることが、ブレスト成功の最大の秘訣です。
ブレスト実施までの事前準備
メンバーが決まったら、速やかに全員にオファーを入れ、場所と時間を確定させましょう。
実施時間は参加者の拘束を最小限にするため、1〜2時間程度が理想です。幅広い知見を集めたいなら短め、具体案を出したいなら長めに設定しましょう。
場所はできるだけ周囲の雑音をシャットアウトできるところが理想です。普段のオフィス周辺だと急な案件で呼び出されるリスクもありますので、少し離れた場所を確保できると理想的です。
面白いアイデアはリラックスした状況で生まれやすいものですから、メンバーがリラックスできる空間づくりにも気を配りましょう。余談ですが、銭湯でブレストというのも面白いアイデアです(議事録の取り方が課題ですが……)。
メンバーと場所が確定したら、ブレストのテーマを事前に共有しておきましょう。ノーアイデアで来てもらってもOKですが、事前にテーマを伝えておけば、無意識のうちにイメージを膨らませた状態で参加してもらえます。
ブレストの準備物
ブレストに欠かせないのがアイデアを書き留めるための大きなボードやシートです。
一般的にはホワイトボードが使われますが、ここでは模造紙の使用を強くおすすめします。
その最大の理由は「1枚目を残せること」です。
ホワイトボードは面積が限られているため、埋まるたびに写真を撮って消す必要があります。これが実はかなり非効率で、アイデアが煮詰まったときに「さっき出たアイデア」を振り返れないのは大きなロスです。
模造紙なら1枚目を壁に貼ったまま2枚目に進めるので、過去のアイデアを見ながら新しい発想をつなげていくことができます。また、時間内にアイデアが出し切れなかった場合も、丸めて持ち帰るだけで次のセッションにそのまま引き継げます。
ホワイトボードのない部屋でも開催できる点も大きなメリットです。模造紙ブレストをまだ試したことがない方は、ぜひ一度チャレンジしてみてください。ASKULなどでまとめ買いしておくと便利です。
正しいブレストのやりかた(当日編)
ファシリテーターの重要性
いよいよブレスト当日です。
ブレストの成否を握るのは、ファシリテーターであるあなたの力量です。
メンバーが発言しやすいムードを作りつつ、議論が脱線しすぎないようコントロールする——この両立が、ブレストを「使えるアイデアの場」にするカギです。
企画書に直結する“使えるアイデア”を引き出すには、ブレスト全体を盛り上げながら議論の軸を保つファシリテーションスキルが不可欠です。
ブレストのルール
ブレストには、参加者全員が守るべき「4つのルール」があります。
ブレインストーミングの4原則
判断・結論を出さない(結論厳禁)
粗野な考えを歓迎する(自由奔放)
量を重視する(質より量)
アイデアを結合し発展させる(結合改善)
引用元:Wikipedia
この4原則をメンバー全員に守らせるのが、ファシリテーターとしての最重要任務のひとつです。順番に見ていきましょう。
(結論厳禁)は、その場でアイデアの良し悪しを判断しないことで、メンバーが思い切って発言できる空気を作るためのルールです。特にベテランメンバーは「それ、実現できる?」と無意識に評価してしまいがちですので、注意が必要です。アイデアの取捨選択はブレスト終了後に行いましょう。
(自由奔放)は、未完成なアイデアでも気にせず発言することを促すルールです。「こんなこと言ったら笑われるかな……」と若手が尻込みするのはよくあること。でも、荒削りなアイデアが別のアイデアと組み合わさって化けることは珍しくありません。ファシリテーターは、どんなアイデアもとりあえず褒めることで、発言しやすい場を作りましょう。
(質より量)は、ケミストリーの確率を上げるためには一つでも多くのアイデアを出すことが大切だというルールです。煮詰まってきたら「あと5つ出しましょう」「この模造紙いっぱいにしましょう」などの目標を提示して、場を盛り上げましょう。
(結合改善)は、誰かのアイデアに「乗っかる」ことでケミストリーが生まれるというルールです。アイデアを単発で終わらせず、どんどん便乗・発展させるよう促しましょう。
4大ルールはブレスト直前に再確認するか、プリントアウトして壁に貼り出すなどして、全員に徹底させましょう。
ブレストの正しい進め方
冒頭では、本日の議題(テーマ)・終了時間・ブレストの着地点を参加者全員に共有しましょう。必要であればブレストの4原則もここで説明しておきます。
次に模造紙を壁に貼り付け、テーマ・日付・参加メンバー・枚数を記載しておきましょう。後で見返すときに役立ちます。
書記はできればあなた自身が担当しましょう。参加者にはアイデアを出すことに集中してもらうほうが効率的です。
開始直後にアイデアが出なければ、あなた自身が呼び水として1〜2個出しましょう。その際、「すごいアイデア」より「こんなものでいいの?」と思わせるくらいのネタのほうが、メンバーの発言ハードルが下がって効果的です。
ブレスト中は、誰かが発言するたびに箇条書きで模造紙に書き留めるのが基本の流れです。どんな些細な発言も必ず記録することで、メンバーが安心して発言できる環境が整います。発言の意図がわかりにくければ、「それはこういう意味ですか?」と確認してもOKです。
模造紙には要点のみを簡潔に書けばOKです。議事録ではないので、あなた自身が後で見て内容を理解できるレベルで十分です。イラストが得意なら、文字と組み合わせて描くとメンバーのイメージが膨らみやすくなります。
ファシリテーションのポイント
ポストイットを使ったブレストもよく見かけます。KJ法などでまとめる際には非常に便利ですが、各人が自分の紙を書くことに集中しすぎて他の人の発言を聞けなくなるという欠点があります。
ルール4の(結合改善)を活かすには、誰かが発言している間は全員がその発言に注目することが大切です。ポストイットを使う際はこの点に十分注意しましょう。
いずれにしても、ファシリテーターであるあなたは常に発言者に全員の注目が集まるように場をコントロールしましょう。
議論が停滞してきたら、ここまでの流れでもう少し深掘りしたいポイントにフォーカスして「この部分をもう少し掘り下げてみましょう」と誘導しましょう。
序盤に出るアイデアは「あたりまえ」なものが多く、本当にユニークなアイデアは場が煮詰まった後に生まれることが多いものです。アイデアが出なくなっても「あと3つ!」「あと2つ!」とギリギリまで粘ってみましょう。
十分なアイデアが集まったと感じたとき、あるいはこれ以上良いアイデアが出そうにないと判断したときは、制限時間内でも潔くクローズするのも判断のひとつです。
ファシリテーター兼書記の役割は多岐にわたりますが、場数を踏めば踏むほど確実にスキルは上がります。積極的に経験を積んでいきましょう。
クロージング
予定の時間になったら、議論の途中でもきっぱりクローズしましょう。まだアイデアが出し切れていないと感じたら、その場で次回のブレストをセッティングしてしまうのもアリです。
一般的にはアイデアを出し切ったところで終了となりますので、模造紙を丸めてそのまま持ち帰りましょう。
ブレストの着地点が「具体的なアイデア」であった場合は、少し早めに切り上げて残り時間をアイデアのレビューに充てるのもおすすめです。「1人3票」で多数決をとる、フリートークで「面白かったアイデア」を共有するなど、簡単な絞り込みをしておくと企画書作成がスムーズになります。
最後は、参加してくれたメンバーへのお礼を忘れずに。これが次回のブレストへの呼びかけをしやすくするコツでもあります。
ブレストの後にすること
使用した模造紙は写真に撮って捨てるよりも、そのまま持ち帰って保管しましょう。次のセッションにいつでも続きから再開できます。
ブレスト後は記憶が新鮮なうちになるべく早く企画書へのまとめ作業に入ることが大切です。ブレストがうまくいったなら、そのままスムーズに企画書作成へと移行できるはずです。
逆に十分なアイデアが集まらず企画書の作成に進めないなら、今回のブレストは残念ながらうまくいかなかったということになります。うまくいかなかった原因をしっかり検証して、次回のメンバー選定やファシリテーションに活かしましょう。
ブレスト運営のスキルは、実践と検証を繰り返すことで確実に上達します。ブレストの達人を目指して、積極的に主催の機会を増やしていきましょう。
まとめ
いかがでしたか。アイデア発想法はたくさんありますが、ブレストはその中でも最もメジャーで、かつ最も有効な手法のひとつです。だからこそ、世界中の企業で日夜実施され続けています。
日常的に行われているからこそ、一度基本に立ち返ってみることが大切です。ブレストの目的を明確にし、メンバー選びにこだわり、4原則を守ったファシリテーションを実践するだけで、「やりっぱなしのブレスト」は「企画書に直結するブレスト」へと変わります。
良い企画書を作り、良いプレゼンを実現し、プロジェクトを成功させるために——まずは今日から、ブレストの正しい進め方を意識して実践してみてください。