こんにちは、アイデア総研の大澤です。
みなさんはブレインストーミング(ブレスト)などでアイデア出しを行った後、どのようにアイデアのまとめを行っていますでしょうか。
アイデアを出しっぱなしのままでは、いつまでたっても企画に落とし込むことができませんよね。
たくさん出されたアイデアのなかから絞込みを行う手法をアイデアの収束技法と呼びます。
それら収束技法のなかで最も有名なものが、今回ご紹介するKJ法です。
KJ法はブレストとセットで行われることも多いので、一度はやったことがあるという方も多いと思います。
しかし、十分にKJ法のやり方を理解しないまま進めると、”時間ばかりかかるわりに何の成果もない”という状況が起こってしまいがちです。
今回はそのような失敗を避けるためのKJ法の正しいやり方と注意点について詳しく説明したいと思います。
そもそもKJ法って何?
KJ法とは、バラバラに集められたたくさんの情報の中から必要なものを取り出し、整理や統合を行うための手法です。
情報を整理するためにポストイットなどの付箋紙を活用し、それぞれを貼りかえながら全体を俯瞰し把握していくのが特徴です。
もともとは日本を代表する文化人類学者である川喜田二郎氏(元東京工業大学教授)が考案した技法で、川喜田氏のイニシャルをとって“KJ法”と名付けられました。
発想法としてのKJ法
KJ法はもともと川喜田氏が文化人類学者として自分自身の学術調査のデータをまとめるために考案した技法です。
本来はフィールドワークによって得られた膨大な観察結果を整理することが目的でしたが、整理の方法を試行錯誤する過程でアイデアを生み出すメソッドとしても有効であることに気付き、その技法を『発想法』として文献にまとめました。
現在使われているKJ法は、この文献の手法がもとになっています。
ブレインストーミング(ブレスト)とKJ法
KJ法は、一見してあまり関連性がみられないようなバラバラな情報をグルーピングしつつ、その過程で新たなアイデアのヒントを得ることができます。
そのため、無秩序にたくさんのアイデアを量産するブレストで出たアイデアを整理するのに適しています。
このことから、ブレストとKJ法が1セットとして行われるケースがよくみられます。
ただし注意が必要な点は、KJ法はブレストで出たアイデアの中からベストのものを選ぶための手法ではないということです。
KJ法は、ブレストで出たアイデアを整理し俯瞰することで、そこから新たな着想やアイデアを得るための手法です。
二次元的に全体の関係性をビジュアル化することで、部分的なアイデアでは得られなかった新しい着想を得ることができるのです。
そこからそのアイデアを練りこんで企画に落とし込むこともできますし、もう一度ブレストなどでアイデアを膨らますこともできます。
ブレストとKJ法を繰り返すことで、より課題の解決に近い本質的なアイデアを得ることができるのです。
KJ法の正しいやり方
では早速、KJ法の正しいやり方について説明します。
KJ法は観察結果の整理などに用いることも多いですが、ここではアイデアの収束技法としての使い方を説明したいと思います。
KJ法は以下のの4つのステップで進めます。
- ブレストの実施とカードの記入(単位化)
- グルーピング(統合化)
- 並び替え(図解化)
- 言葉にする(文章化)
KJ法のポイントはこちらのフォーマットにまとめておりますので、参考にしてみてください。
では、それぞれのステップについて詳しく説明します。
ブレストの実施とカードの記入
まずはブレストを実施します。
ブレストではホワイトボートや模造紙にアイデアを書き出していくケースが多いですが、KJ法を行う場合は必ずポストイット(付箋紙)にアイデアを書き出すようにしてください。
アイデアは必ず1枚に1つずつ記入します。
1枚に複数のアイデアが含まれていると感じた場合には、複数のポストイットに分割して記入しましょう。
アイデアを記入する際には、後から見たときに何のことだかわからないということがないように、具体的かつわかりやすく記入するようにしましょう。
記入したポストイットはホワイトボードや模造紙にランダムに貼り付けていきましょう。
模造紙に貼るところがなくなったあたりで、次のステップに進みましょう。
グルーピング(統合化)
次のステップはグルーピングです。
実はここが最も重要なステップとなります。
まず全てのポストイットを読めるように広げなおし、ざっと全体に目を通してみましょう。
次に、アイデアの意味や文脈が近い感じのものを重ねていきます。
まずは2~3枚ごとの小グループにまとめましょう。
この段階では、どれとも似ていないものは無理にまとめずそのままにしてください。
その後、小グループの一番上にタイトル(ラベル)を書いたポストイットを貼り付けます。
タイトルはグループ全体の意味をピッタリと言い表したものにしましょう。
ポストイットのカラーが何色かある場合は、アイデアとタイトルで色を変えるとわかりやすくてよいでしょう。
全てのタイトルを貼り終わったら、もう一度全体を見直しましょう。
そして、同じように小グループのなかで近いものをまとめていき、新たにタイトルをつけましょう。
これを繰り返し、だんだん大きなグループにまとめていきます。
最終的に、10個程度の大グループにまとめるところまで作業を進めましょう。
大グループにまとめ終わったら次のステップに進みます。
並び替え(図解化)
次に、全体の位置関係を見直します。
模造紙やホワイトボード上でのグループの位置関係を見直します。
はじめはバラバラに並べられていると思いますので、まずは意味が近いものを近くに、遠いものを遠くへと並び替えてみましょう。
ある程度位置関係が整理できたら、いくつかの大グループの中で共通するものを丸で囲み、3~4個程度の大きな島を作りましょう。
それぞれの島にもタイトルをつけます。
タイトルは直接模造紙やホワイトボードに書き込んでしまいましょう。
この段階で重ねたポストイットが邪魔に感じる場合は、別のホワイトボードや模造紙に書き写してもかまいません。
次に、それぞれの大グループや島の相関性を図示します。
それぞれを線や矢印で結び、それがどういう関係を表すのかを線の上に記入しましょう。
主な相関性には次のようなものがあります。
- 関係あり
- 原因
- 結果
- 因果
- 類似
- 反対
ここまでくればあと一息です。
言葉にする(文章化)
最後にまとめとして、相関性が図示された全体の関係性を文章化します。
並び替えのステップまででKJ法をやめてしまうケースがありますが、それは間違いです。
KJ法は単に情報を整理するだけの手法ではありません。
最終的に図解化されたものをだれでもわかる形で文章化することで、新たな着想やアイデアを得ることができるのです。
文章化の際には、全ての大グループについて言及する必要はありません。
お互い因果関係で結ばれているものを中心に、ひとつなぎで文章化して書き出していきましょう。
一度に文章を作るのは困難ですので、いったんホワイトボードなどに断片的な文章を書き出し、~だから~ ~なので~ などの接続詞でつなげながら、試行錯誤をして文章を作りましょう。
最終的に完成した文章が、新たなアイデアそのもの、もしくは新たなアイデアのきっかけとなります。
そこで得られたアイデアは、単なる思い付きではなく課題の本質的な解決方法に近いものになっています。
KJ法を失敗しないためのポイント
KJ法はやや難易度の高いメソッドですので、進め方を間違うと思ったような結果を得ることができません。
KJ法がうまくいかない場合には、だいたい次の点に問題があります。
思うように結果ができないと感じた場合には、以下の4つのポイントをチェックをしてみましょう。
タイトルを抽象化しすぎてしまう
これが最もやってしまいがちな失敗例です。
たとえばアイデアの文章の中に同じ言葉が入っているからといって、機械的に同じグループにわけてしまうのは危険です。
なぜなら、アイデアの文脈上は全く逆の意味を表してるかもしれないからです。
タイトルをつける際には、単純なカテゴリーでくくるのではなく、必ずアイデアの文脈や意味の共通点を見つけ出すようにしましょう。
もしあなたがKJ法のファシリテーションをする場合には、この点に十分に注意して進めるようにしょう。
はじめに大きく分類してから小さいグループに分類してしまう
KJ法の正しい進め方を知らないとやってしまいがちな間違いです。
はじめの段階で先入観をもとに大きくカテゴリ分けをしてしまうと、その時点で全体の方向性を規定してしまうことになります。
そうしてしまうことで、本来見つかる可能性のあった新しい関係性の発見を見逃してしまうことになります。
KJ法では自分たちの気付かなかった発見や気付きを得ることが重要ですので、決して”これはこうである”という先入観に基づいた分類を行わないようにしましょう。
図解化・文章化の作業を省いてしまう
KJ法を単純なグルーピング作業と考えてしまい、2番目のステップまでで作業を終えてしまうケースが良く見られます。
グルーピングを行うと一見して作業が進んだように見えますが、そこから何らかの新しい解釈やアイデアを得られなければ何の意味もありません。
図解化や文章化は時間のかかる作業ですが、必ず最後のステップまで進めるようにしましょう。
全員の確認をとらずに作業を進めてしまう
グループの作成や並べ替えを行う際には、必ず全員の同意を確認するようにしましょう。
それぞれの作業を進める中で、メンバー内で意見をぶつける中にこそ新しい発見があるのです。
グルーピングや文章化のアイデアを思いついたら、まず全員に”なぜそう思うのか”を説明し、意見を求めるようにしてください。
そして、全員が納得するまでしっかりと議論を行うようにしましょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
KJ法は非常に時間のかかるメソッドです。
そのため、ついついおざなりな分類を行ってしまったり、途中のステップまでで作業をやめてしまったりしがちです。
当然そのような進め方をしてしまうと何の成果も得ることができませんので、”KJ法は時間ばかりかかって身にならない”という誤解を生んでしまうことになります。
KJ法は一見すると手間がかかり面倒な手法に見えますが、正しいやり方で丁寧に進行することで必ず課題を解決するための本質的なアイデアにたどりつくことができます。
KJ法を正しく行うために、あなた自身がファシリテーターとなって正しい進め方をナビゲートできるようなスキルを身につけましょう。
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医療従事者です。
真のプロフェッショナルになる!を目標に具体的な行動目標を立てようと部署で企画しようと思います。そのためKJ法にてよりイメージを具現化しようと思うのですが注意点やアドバイスを頂けたら幸いです。
ご質問ありがとうございます。
目標設定を行うようでしたら、KJ法よりもマインドマップを使用することをおススメいたします。
http://idea-soken.com/mindmap-goal
マインドマップを活用した目標設定については、
こちらの記事で詳しく説明しております。
是非ご参照いただければと思います。