こんにちは、アイデア総研の大澤です。
みなさんも、一生懸命プレゼンをしても内容が思うように相手に伝わらず、がっかりしたり落ち込んだ経験が一度や二度はあるのではないでしょうか。
たとえばプレゼンの翌日、上司に「昨日のプレゼンいかがでしたか?」と聞いてみても「えーと、昨日の企画ね。あーあれあれ、どんなのだっけ?」といった具合で、驚くほど相手に伝わっていないこと、ありませんか?
”あんなにわかりやすく丁寧に説明したのに、なぜ伝わっていないのだろう?”
そう考えたあなたは、もしかしたら人の記憶力を過信しすぎているのかもしれません。
人が一度に記憶できる量は、あなたが思っているよりもずっと少ないものなのです。
そもそもプレゼンの目的は、提案する内容をきちんと理解してもらい、最終的に採択してもらうところにあります。
ですので、提案した内容がきちんと伝わっていないということは致命的な問題です。
”相手に伝わるプレゼン”をするためには、人が一度に記憶できる量を意識する必要があります。
今回はマジックナンバーを使った伝わるプレゼンのコツについて説明したいと思います。
人の記憶力の限界とは?
私が主催する研修やセミナーのなかで、受講者に企画をプレゼンをしてもらった後に、お互いどのくらい内容を覚えているかを書き出してもらうことがあります。
結果はせいぜい一言二言、10人以上プレゼンした場合には、何人かの分は全く覚えていないことも珍しくありません。
この結果を見ると、たいていプレゼンした人はびっくりします。
これは、聞き手にプレゼン内容を伝えることがいかに難しいか理解してもらうために行っています。
では、ビジネスにおいてはどうしょうか。
実務においては、部長や役員などの決裁者は一日のあいだに多くの案件を処理しているため、すべての内容を詳しく記憶することはほぼ不可能です。
そのなかであなたのプレゼン内容を覚えてもらうには、人に伝えることの難しさを十分理解したうえで、どうすれば相手に伝わるかを工夫する必要があります。
マジックナンバー7
では、一度に人に伝えられる情報量の限界はどの程度なのでしょうか。
この問題を語る上で有名な説に”マジックナンバー”があります。
あなたは”マジックナンバー7(±2)”という言葉を聞いたことはありますか?
何かを記憶するときに、その数が7プラスマイナス2、つまり5~9個までであれば記憶にとどめやすいという説です。
アメリカの心理学者ジョージ・A・ミラーが1956年に発表した論文の中で使われた造語ですが、人間が一度に記憶できる要素の限界数を示す基準として広く知られています。
実際に、7で語られる用語はたくさんあります。
世界の七不思議、七つの海、七つの大罪、七つ道具、七福神など、洋の東西を問わずきりの良い数字として7いう数がよく出てきます。
この学説は、約50年もの長い間定説となっていました。
しかし、実際には7という数は意外と多く感じられますよね。
簡単な実験
ここでひとつ簡単な実験をしてみましょう。
次の7つの言葉を10秒間で覚えてください。
時計の準備はよろしいですか?ではスタート!
カエル・帽子・辞書・サッカー・消防車・冥王星・五百円
10秒たちましたね。
では、目をつむって今の単語をできるだけ多く思い出してください。
・・・・
いかがでしょうか。
多くの方は、せいぜい覚えている単語が3つ~4つ程度ではないかと思います。
このような簡単な単語を覚えるだけでも7つは多すぎるといえます
しかもこのケースでは”記憶してください”という前提でお題が出ていますので、比較的覚えやすいはずであるにもかかわらずです。
これがプレゼンの場であったらどうでしょうか。
「この企画のポイントは7つあります。ひとつめは・・・」
という話をしたとして、全てのポイント覚えてもらうことが可能でしょうか。
おそらく”情報が多すぎてなんだかよくわからないプレゼン”になってしまうはずです。
本当のマジックナンバー
実際のところは、ミラーは必ずしも7つまで覚えられると結論付けているわけではないといわれています。
かわりに現在では、2001年にミズーリ大学の心理学教授であるネルソン・コーワンが発表したマジックナンバー4(±1)こそが人間が一度に記憶できる要素の限界数であるというのが定説になっています。
多くて5、少なくて3であれば覚えられそうですね。
プラスマイナス1というのは個人差を考慮してのことですので、誰にでも確実に伝えるために少ないほうの3をプレゼンで使うべきマジックナンバーとして考えるとよいでしょう。
この”マジックナンバー3”は、すでにいろいろなところで使われています。
たとえば世界三大美女、世界三大料理、世界三大オーケストラなど・・・
世界七不思議は全て覚えられなくても、日本三景であれば覚えられそうですね。
また、プレゼンの場でもマジックナンバー3は活用されています。
ひとつ例をみてみましょう。
iPhoneのプレゼンテーション
プレゼンの名人といえば、故スティーブ・ジョブズが真っ先にあげられるでしょう。
彼のプレゼンはどれも素晴らしいものばかりですが、その中でも最高傑作といわれているのがiPhoneのプレゼンです。
そのプレゼンの冒頭をみてみたいと思います。
アップルは幾度かの機会に恵まれた。
1984年、Macを発表。PC業界全体を変えてしまった。
2001年、初代iPod。音楽の聴き方だけでなく、音楽業界全体を変えた。本日、革命的な新製品を3つ発表します。
1つめ、ワイド画面タッチ操作の「iPod」。
2つめ、「革命的携帯電話」。
3つめ、「画期的ネット通信機器」。
3つです。タッチ操作iPod、革命的携帯電話、画期的ネット通信機器。
iPod、電話、ネット通信機器。 iPod、電話……おわかりですね? 独立した3つの機器ではなく、ひとつなのです。
名前は、iPhone。
本日、アップルが電話を再発明します。引用元:2007年1月9日アップル基調講演
これが歴史的な名プレゼンの冒頭の部分です。
わかりやすく印象的で、かつ意外性がある素晴らしいプレゼンですね。
このなかで、マジックナンバー3が見事に生かされているのがわかると思います。
キーとなるメッセージ(ヘッドライン)は”アップルが電話を再発明します”で、このフレーズはプレゼン全体の中で何度も語られ、聞くものに強く印象付けられました。
プレゼンを聞いた聴衆は、たとえ3つのポイントを忘れてしまっても、”iPhoneは革新的な新商品である”というメッセージは忘れることはないでしょう。
キーメッセージは1つ
ここで重要なことは、伝えるポイントを3つに絞って印象を強める同時に、それらすべてがキーメッセージを説明するものであるという点です。
・ワイド画面タッチ操作のiPod
・革命的携帯電話
・画期的ネット通信機器
これら3つのポイントは、全て”アップルが電話を再発明します”というキーメッセージを説明していますね。
・キーとなるメッセージは1つ
・そのメッセージを説明するのポイントが3つ
このスタイルが、マジックナンバーを活用した”伝わりやすいプレゼン”の基本であるといえます。
伝わりやすいプレゼンの例
では、実際に例をあげて考えてみましょう。
仮にあなたが家電メーカーの開発部門に所属しているとしましょう。
そしてあなたは、新しい冷蔵庫のプレゼンテーションを行おうとしています。
新しい冷蔵庫には7つの特徴があります。
これらすべてを説明すると・・・
のようになります。
このままだと確かに多機能であるのは伝わりますが、商品があまり印象に残りませんね。
これは情報を伝えすぎている典型的な”伝わらないプレゼン”の例です。
では、同じ商品を相手に伝わるようにプレゼンするにはどうすればよいでしょうか。
まず、キーメッセージを厳選します。
今回のキーメッセージは、7つの特徴から重要な要素を絞り込み”グルメのための冷蔵庫”としました。
そして、次のようにプレゼン内容を変更します。
すると、同じ商品でありながらどんな冷蔵庫なのを印象的に伝えることができるのがわかると思います。
これでしたら”伝わるプレゼン”を行うことができそうですね。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
企画者はついつい自分が考えたことをすべて伝えたくなってしまいますので、プレゼンの情報量を増やしてしまう傾向があります。
ですが、実は伝える量を増やすとかえってプレゼンが伝わらなくなってしまうのです。
伝わるプレゼンをするためには、人が一度に記憶できる量の限界を意識して情報量を減らす(絞る)ことが重要です。
情報を減らすことで、結果的に伝えたい内容のみをフォーカスして伝えることができるのです。
マジックナンバー3とキーメッセージを意識してプレゼン資料を作成すれば、きっと伝わるプレゼンを行うことができるしょう。
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