こんにちは、アイデア総研の大澤です。
あなたも、たとえば月末に迫った大事なプレゼンのための良いアイデアがどうしても出ずに、おもわず頭を抱えてしまった・・・というようなことが一度や二度はあるのではないかと思います。
会社のデスクに座ってウンウンと悩んでいても、なかなか良いアイデアは出ませんよね。
このような状況では、気持ちばかりが焦ってしまい、思うように発想できないものです。
そんなとき、気分転換に友人や家族と遊んでみたり、風呂に入ってリラックスしているときなどに、ふと良いアイデアをひらめいた・・・というような経験はないでしょうか。
このようなアイデアのひらめきが訪れる瞬間というものは、一見偶然のタイミングでやってくるように感じます。
しかし、実はひらめきは一定のプロセスを経た上でやってくるものなのです。
今回は、アイデアをひらめくために今すぐとるべき方法について、さまざまな事例を参考に説明したいと思います。
アルキメデスのエピソード
あなたは、”Eureka(ユリーカ・エウレカ)”という言葉を聞いたことはありますでしょうか。
古代ギリシャ語で「われ発見せり」という意味の言葉で、かのアルキメデスの発した台詞として有名です。
アルキメデス(紀元前287年?- 紀元前212年)は古代ギリシアの数学者・物理学者・技術者・発明家・天文学者です。
彼は古代第一級の科学者として多くの分野で功績を残しましたが、その中でも彼の名前を冠した”アルキメデスの原理”は特に有名です。
アルキメデスの原理とは
流体中の物体は、その物体がおしのけた流体の重さ(重力)と同じ大きさの浮力を受ける
という物理現象です。
中学の理科で習いますので、理系以外の方も一度は聞いたことがあると思います。
では、この原理をアルキメデスが発見したときの逸話はご存知でしょうか。
ユリーカ!のうまれた瞬間
あるときアルキメデスは、ギリシアの植民都市であったシラクサの王・ヒエロン2世から「この王冠が本当に純金でできているかどうかを調べよ」という命を受けました。
王冠の密度を調べれば一目瞭然なのですが、そのためには王冠を熱で溶かして体積を計算できる形状に成型しなおさなければなりません。
大切な王冠を壊さずに調べるためには、従来の手段以外の全く新しい方法を考えださなければなりませんでした。
彼はあらゆる方法に関して思いをめぐらせましたが、それでもなかなかよいアイデアは思い浮かびません。
アイデアに詰まった彼は、気分転換に風呂につかっているときに、浴槽からこぼれ落ちる湯を見て突如アイデアをひらめきます。
彼は、水を満たした容器に王冠と金細工師に与えたのと同量の金を交互に入れ、あふれ出した水の量をくらべることで、王冠が純金かどうか調べられることに気付いたのです。
このアイデアをひらめいたアルキメデスは「Eureka!(われ発見せり!)」と叫びながら、裸でシラクサの街を駆け回った・・・というのが、彼の有名なエピソードです。
アルキメデスは入浴中にアイデアをひらめきましたが、なぜこのような状況になるとよいアイデアが出やすくなるのかについて、ジェームス・W・ヤングが彼の著書『アイデアのつくり方』のなかで詳しく説明しています。
アイデア発想の5つの段階
ジェームス・W・ヤングは、彼の名著『アイデアのつくり方』の中で、以下の5つの段階を経てアイデアが生まれると述べています。
第1段階:資料の収集
第2段階:資料の咀嚼(そしゃく)
第3段階:問題の放棄
第4段階:アイデアの誕生
第5段階:アイデアの適用
それでは、順を追って見ていきましょう。
資料の収集
まず第1段階の”資料の収集”とは、情報を集めるためのプロセスです。
ヤングは、アイデアの発想に必要な資料を特殊資料と一般資料の2つに分類しています。
特殊資料とはアイデアが必要な課題に対する直接的な資料をさします。
たとえばビールの新商品のアイデアであれば、ビールの市場や技術などに関する資料と、ビールを飲む消費者に関する情報になります。
対する一般資料とは、課題に対して直接関係しない、この世の中のあらゆる分野に関する資料のことをさしています。
ヤングは資料収集の重要性に関して「あらゆる方面のどんな知識でもむさぼり食う、牛と同じで食べなければミルクは出ない」という言葉で表現しています。
資料(情報)の収集はアイデア発想の起点であり、この部分をおろそかにしてしまっては次以降の段階に進むことはできません。
資料の咀嚼(そしゃく)
第2段階の”資料の咀嚼”とは、収集した資料に検討を加えるプロセスです。
収集した資料をいろいろな角度から眺めたり、パズルのピースのように自由に組み合わせたりしてさまざまな観点から検討をおこないます。
ここで重要なのはこの段階で結論を出すことではなく”パズルを組み合わせる努力を実際にやりとげること”自体にあります。
この段階では心の中がゴチャゴチャになってしまい、アイデアの生みの苦しみを味わうことになりますが、それでもあらゆる検討を加えつくすことで、ようやく次の段階に進むことができるようになります。
問題の放棄
第3段階の”問題の放棄”は、いったん課題の検討を放棄して、自分の想像力や感情を刺激するものに心を移すというプロセスです。
このプロセスこそがひらめきを生み出すための最大のポイントであり秘訣になります。
冒頭の月末にプレゼンがある状況に置き換えると、まさに期限が迫ろうとしているときに別のことに意識を向けろといわれても抵抗があると思います。
ですが、第1段階と第2段階をきちんと行っていれば恐れることはありません。
思い切って、無意識にまかせて感情をゆさぶるものに心を移しましょう。
心の緊張をといて自由にしてみることで、次の段階が訪れるのを待ちます。
アイデアの誕生
いよいよ、第4段階の”アイデアの誕生”のプロセスです。
ヤングは、第3段階で心の緊張を十分に解きリラックスすることで、休息とくつろぎの最中に突然アイデアをひらめくと述べています。
これこそが「ユリーカ!」の生まれる瞬間です。
アルキメデスも、あらゆる検討を行った後で緊張を解いてリラックスしたことで、アイデアの誕生を迎えることができました。
アイザック・ニュートンの万有引力の発見も、同じようなプロセスを経て誕生したと説明できるでしょう。
ヤングの言葉を借りれば「その到来を最も期待していない時」にこそ、ひらめきはやってくるのです。
アイデアの適用
アイデアは発想した段階で終わりではありません。ヤングはアイデアを発想した後のプロセスに関しても述べています。
それが第5段階の”アイデアの適用”です。
ヤングはアイデアは自分だけが認識できる状態ではまだ完成とはいえず、そのアイデアを具現化して”しかるべき場所”に送り出して、はじめて意味があると述べています。
プランナーの業務に置き換えると、アイデアを企画書にまとめ、プレゼンテーションを行い、採択されたうえでプロジェクトとして実行してはじめて意味がある、ということになります。
実行しないアイデアには価値がない、という意味ですね。
これら5つの段階こそがアイデアのつくり方の本質であり、このプロセスを理解しておけば”偶然のおとずれ”を待たずにアイデアのひらめきの瞬間を迎えることは可能なのです。
欧陽脩(おうようしゅう)の「三上(さんじょう)」
では、ヤングの提唱した5つの段階において、第4段階の”アイデアの誕生”が起こるのは、具体的にどのようなシチュエーションなのでしょうか。
『アイデアのつくり方』の中では、ひげを剃っているとき・入浴中・朝目覚めたときなどが例に挙がっていますが、アイデアをひらめきやすいシチュエーション(場所)については古今東西あらゆる人々にとって興味のあるテーマであったようです。
有名なものとしては、文章を考えるのにふさわしい場所としてあげられる”三上(さんじょう)”があります。これはアイデアの着想にも応用できます。
”三上”とは、11世紀中国の政治家・文学者である欧陽脩(おうようしゅう)が『帰田録』に書いた言葉で、文章を考えるのに最も都合がよいという3つの場面をさします。
その3つとは
「馬上」
「枕上(ちんじょう)」
「厠上(しじょう)」
のことをさします。
それぞれについて、エピソードを交えてみていきましょう。
馬上
馬上とは、文字通り馬に乗っている状態です。
現代では乗馬の機会は少ないですので、電車や自動車、バイクや自転車などの乗り物に乗っている状態に置き換えられます。
1日にわずか3時間しか睡眠をとらなかったといわれるフランスの皇帝ナポレオン・ボナパルトは、大量の読書や過去事例の研究を怠らなかった勉強家として知られていますが、彼の数々の戦略や政治に関する発想は行軍中の馬上で行われたといわれています。
また作家の遠藤周作氏は、自宅近くを走る電車に乗りながら小説のアイデアを考えていたそうです。
車の運転中にアイデアをひらめくことが多いという方もいると思います。
運転中はメモをとることができませんので、そういう方はいざというときのためにボイスレコーダーなどをダッシュボードに常備しておき、停車中にすばやく声を吹き込むとよいでしょう。
枕上(ちんじょう)
枕上とは枕の上、つまりベッドやふとんで眠りに落ちる前や睡眠中、起床直後などの状態をさします。
ビートルズのメンバーであるポール・マッカートニーは、かの名曲”イエスタデイ”のメロディを夢の中で思いついたという有名なエピソードがあります。
美しく青きドナウなどを作曲し”ワルツ王”と呼ばれたヨハン・シュトラウス2世も、睡眠中にメロディを思いつき、ベッドのシーツにあわてて楽譜を書き込んだというエピソードが残されています。
また、ノーベル物理学賞を受賞した湯川秀樹博士は、睡眠中に原子の構造をひらめいたそうです。
実際に多くのクリエイターの方が睡眠前や起床後にアイデアを思いつくという体験をしており、枕元に常にメモ帳をおいている方もたくさんいらっしゃるようです。
厠上(しじょう)
3つめは厠上です。
厠上の厠(かわや)とはトイレのことで、用を足している時という意味です。
戦国武将の武田信玄は屋敷内に六畳敷きの広い閑所(トイレ)を設置しており、用を足すついでにさまざまな作戦を練っていました。
領民の訴訟にかかわる判例もここで考えており、トイレの入り口には地域ごとに分類された訴状が入れられていたそうです。
お笑い芸人の千原ジュニアさんは自室のトイレに一冊の黒いノートを設置しており、トイレで物思いにふけりながら思いついた言葉をそのノートに書き記しているそうです。
ここで書かれたノートは「便所は宇宙である」シリーズとして出版されています。
裸になるという意味では入浴中も似たようなものといえます。アルキメデスの「ユーリカ!」のエピソードもここに含めてよいかもしれません。
これら三上には、基本的に一人でいられる、リラックスした状態であるという共通点があります。
こうしたことから、三上にこだわらなくても自分なりのアイデア発想のための場所やシチュエーションをみつけることができるはずです。
それは公園のベンチかもしれませんし、会社の屋上かもしれません。
あなただけの特別なアイデア・スポットをぜひ見つけ出してみてください。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
昔からアイデアのひらめきは”天啓”ともいわれ、天から与えられるものとして考えられてきました。
しかし、ヤングの提唱したアイデア発想の5つの段階や三上をはじめとするアイデアを発想しやすいシチュエーションを知ることによって、意図的にひらめきの訪れをたぐりよせることが可能なのです。
もしあなたが今アイデアを求めているのであれば、これらのプロセスをすぐに試してみてください。
きっとあなたにも「ユーリカ!」の瞬間がやってくるはずです。
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