こんにちは、アイデア総研の大澤です。
”企画書の基本的な「型」である”FPSE”を覚えよう!”で説明したように、事実(Fact)・課題(Problem)・解決策(Solution)・効果(Effect)の頭文字をとった“FPSE”が企画書の基本的な「型」になります。
この「型」に沿った企画書の作成では、最初のステップで事実(Fact)を集めた後は、それら中から課題(Problem)を設定するステップに進みます。
企画書における課題(Problem)とは解決すべき内容そのものであり、企画書のメインテーマといえます。
課題(Problem)の設定の仕方によって、最終的な提案内容となる解決策(Solution)が180度変わってくることもありえます。
そういう意味で、課題(Problem)の設定は全体の方向性を定める極めて重要なステップといえるでしょう。
本稿では、企画書で解決すべき課題(Problem)の設定のしかたについて詳しく説明いたします。
企画書における課題(Problem)とは
“FPSE”に沿った企画書の作成ステップでは、事実(Fact)を収集した後は、それらの中から課題(Problem)を見つけるステップに移ります。
事実(Fact)そのものはバラバラな断片でしかありませんが、それらを俯瞰で見渡すことにより何らかの”気付き”を得ることができます。
その”気付き”を言語化したものが”解釈”です。
事実(Fact)自体は客観的なもので、一切の主観性は入っていません。
ここのステップでは、事実(Fact)に”解釈”を加えることて”情報化”し、主観的な課題(Problem)の設定を行います。
事実(Fact)と情報の違い
現在の社会は情報そのものが資源と同等の価値を有した情報化社会であるといわれています。
事実(Fact)と情報(Information)は同じものとして扱われることもありますが、これら両者には明確な違いがあります。
事実(Fact)に”解釈”を加えたものが”情報”になるのです。
事実(Fact)は客観的なものですが、情報には主観性が含まれます。
ニュース番組や新聞を思い浮かべてみましょう。
例えば”急激に円高が進んだという”事実(Fact)があった場合、新聞やニュース番組では記者や解説員やコメンテーターが事実(Fact)に”なぜ円高が進んだのか”という解釈を加えてメディアで情報として発信します。
これを事実(Fact)の情報化といいます。
その部分がニュース番組や新聞のオリジナリティであり、事実(Fact)に対する付加価値の部分であるといえます。
解釈は人によって異なるもの
事実(Fact)は客観的なものであり、誰が見ても同じものです。
たとえば”30分”という時間の長さは、世界中で常に一定です。
ですが、楽しい時間はあっという間に過ぎ、つらい時間は永遠に感じてしまうように、同じ長さの時間であっても長いと感じるか短いと感じるかは人によってそれぞれです。
同様に、同じ事実(Fact)であっても、それをどのように受け止めるかによって”解釈”が異なってきます。
つまり、全く同じ目的で同じ事実(Fact)をもとに企画書を作成しても、”解釈”のしかたによって提案する解決策(Solution)の内容はがらりと変わってきます。
そういう意味で、課題(Problem)の設定は企画書の作成ステップの中で最も全体の方向性に影響するステップといえます。
企画書における課題(Problem)の役割
また、企画書で提案する内容に対して、その提案内容をすぐに行動に移したいと思えるかどうかは課題(Problem)の設定にかかってきます。
より緊急性が高い、至急対応すべきだという思える点を課題(Problem)に設定することができれば、決裁者をすぐに行動に移させることが可能でしょう。
また、課題(Problem)には主観性が入りますので、プレゼンを聞くもの全員を納得させるのは困難です。
ですが、独りよがりの解釈を行うのはよくありません。
なるべく大勢を納得させる解釈を行ったうえで、課題(Problem)の設定を行うようにしましょう。
課題(Problem)の見つけ方
同じ事実(Fact)を見ても、そのなかからどうやって適切な課題(Problem)を設定できるかはプランナーの力量次第であるといえます。
ですが、たとえ経験の浅いプランナーであっても、いくつかのポイントを抑えることで課題発見のスキルを向上させることが可能です。
その方法について具体的に説明したいと思います。
”あるべき姿”を明確化する
まずはじめにするべきことは、企画書によって達成したい”あるべき姿”を明確化することです。
”ちょっと待って!企画書作成の前に確認すべき12の項目”で詳しく説明したように、企画書作成の一番初めのステップは”目的の確認”です。
その中で設定した企画書作成の目的の中から、企画提案によって達成するべき将来像=あるべき姿を明確化しましょう。
その際、できるだけ具体的に”あるべき姿”を設定することが大切です。
例えば”Aという商品の売上げをアップする”ことが目的であれば、具体的な”あるべき姿”として次のようなものが考えられます。
- 年間売上げ(もしくは販売数)○○の達成
- 昨年対比○○%のアップ
- 市場のシェア1位を目指す
- カテゴリーの年間売上げランキング1位を目指す
- 小売店Bで一日あたり○個販売する
上記のような、できる限り具体的な数値目標を設定して”あるべき姿”の具体化・明確化してみましょう。
そうすることで、課題(Problem)の設定がより具体的にできるようになります。
”想い”をこめる
あなた自身の将来の”あるべき姿”を思い浮かべた場合、”40歳までに年収○○を目指す”などという数値的な目標だけではなく、”誠実でありたい””人に優しくありたい”などといった”想い”が挙げられると思います。
このように”あるべき姿”の具体化においては、数値で客観的に表すことも重要ですが、同時に主観的な”想い”にも注目しましょう。
こうありたい、というあなた自身の想いは数値化できません。
ですが、企画のプレゼンを行ううえでプランナー自身の”想い”は大きな武器になります。
決裁者も人間である以上、あなた自身の”想い”がこもっているかどうかも重要な判断基準となります。
ただし、”想い”と”数値的な目標”のどちらをどの程度重要視するかについての優先順位をつける必要があります。
なおここでの想いとは、あなた個人のものだけではなく組織(会社)としてのビジョンも含まれます。
現状を把握する
次にするべきことは、”あるべき姿”に対する現状の把握です。
この段階では、収集した事実(Fact)の数や精度が重視されます。
事実(Fact)を俯瞰することで、”あるべき姿”に対して現在はどこに位置しているか明確化し、把握しましょう。
先ほどの例でいうと、
- 商品Aの販売状況
- 現在の市場でのシェア
- 他社の状況
- 市場のトレンド
- 消費者のマインド
- 購入者のアンケート
などのさまざまな事実(Fact)から、”あるべき姿”に対する現状の数値的な対比や、今のような状況にになっている理由など、あらゆる”情報”を並べてみましょう。
そして、それらの”情報”を整理し、取捨選択を行います。
この段階で不足している”情報”があれば、追加して収集するか類推をする必要があります。
そして”あるべき姿”に対しての現在地=現状を明確にしていきます。
両者のギャップを確認する
”現状”と”あるべき姿”の間には、必ずギャップが存在します。
ギャップとは、現状と”あるべき姿”の差分です。
もしギャップがないのであればそもそも問題が存在しないわけですから、企画の提案は必要ありません。
確認すべきなのは、この両者のギャップがどの程度であるかです。
わずかなギャップであれば微細な解決方法(Solution)で達成できるかもしれませんが、あまりに開きがある場合にはドラスティックな解決方法(Solution)が必要となるでしょう。
そういう意味で、”あるべき姿”と”現状”の位置関係をできる限り正確につかむことがこのステップでは求められます。
ギャップが生まれる理由を考える
次に、なぜこのようなギャップが生まれたのかを考えてみましょう。
先ほどの例ですと、売上げのギャップが生まれた要因は何でしょうか。
- 商品力が低い
- 商品認知度が低い
- 自社の営業力が弱い
- トレンドが下がっている
- 市場全体が縮小している
上記のようなギャップを生み出したと考えられる要因を、さまざまな情報の中から書き出していきましょう。
そしてそれらの中から、最も重要であると思われる課題(Problem)を特定していきます。
課題(Problem)を見つける
図のように、現状のあるべき姿の間隔がギャップでありそのギャップを乗り越えるためのハードルが課題(Problem)です。
ギャップを生み出す要因はひとつではない場合もありますが、その中のひとつを解決できれば同時に他の問題も解決できるという最も中核的な課題(Problem)はどれであるかを明確化していきましょう。
最終的に課題(Problem)を明確化することができれば、このステップは終了です。
そして、その課題(Problem)に対する解決方法(Solution)を見つけるステップに移ります。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
ただ課題(Problem)を見つけるだけでずいぶん回りくどいことをするように感じるかもしれませんが、企画書においてこのステップは全体の方向性を定めるきわめて重要なパートとなります。
課題(Problem)の設定を誤ってしまっては、最悪の場合企画の提案自体が無意味なものになりかねません。
慣れてくるとこれらの作業を事実を集める作業と同時に行うことができるようになりますが、慣れないうちはここで書いたような流れに沿って進めるようにしましょう。
そして、いよいよ次は企画書作成で最もクリエイティブでエキサイティングな解決方法(Solution)の検討へと進みます。
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